森氏がそうだったように、男女のわかりやすいカテゴリーにくくる物言いや行動は、日常に染みついてしまっている。それを一つずつ丁寧に取り除く作業が、家庭でも社会でも必要だ。

 幼稚園のお遊戯会を見に行った40代の男性は、「あーあ」という残念な思いが拭いきれなかったという。ステージ上では、女の子はピンクのスカートに花かんむり、男の子は黒いベスト。当然のように男女分けられた衣装を着せられていたからだ。

「家では“男らしさ”みたいなことは決して求めないようにしているけれど、学校や幼稚園から“らしさ”をどうしても持ち帰ってきてしまう。その度に必ず“らしさ”は決めつけなくていいんだ、と話しています」

■ママが抱いた違和感

 男性はアンパンマンも「男性が主役、女性がサポート役という区分けが強くジェンダーバランスが歪(いびつ)で、見ていてつらかった」と振り返る。だが、こうしたものに触れさせないことが解決策だとは考えていない。

「ジェンダーにかかわらずアンバランスなものが溢れかえった社会で生きていかないといけない。嫌なときに違う選択肢を選んだり、距離をとって考えたりする習慣を身につけられるように普段から強調しています」

 社会の中で「カテゴリー外し」を試みるのは2人の男の子のママである渡部美雪さん。「Neutral 性別のない子供服店」を運営する。息子たちに着せる服の世界が「男児向け」「女児向け」にパッキリと二分されていることが気になっていた。

「男の子なら車と怪獣とサメの柄ばかり。自分が子どもに着せて居心地がいいと感じられる服がなかったんです」(渡部さん)

 海外に目を向ければ、個性や好みで選べる子ども服がたくさんあった。日本では子どもの個性よりも先に、性別のカテゴリーがある状態に大人が仕向けているのではないか。その状況を変えたいと思い、自らセレクトしたものを仕入れてウェブ店舗で販売を始めた。スカートやワンピースも扱うが「ガールズ」の枠でくくらない。柄で「ボーイズ」とくくることもない。大事なのは、着たい服を着たい子が着られること、性別の隔てなく似合うものを選べることだ。

「これまでは着せたい服が見つからなかった」という親や、その性別の服を着たがらない子どもの親から「助かります」という声を聞くことも多いという。

 前出の田房さんは訴える。

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