常盤貴子 (c)朝日新聞社
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斎藤工 (c)朝日新聞社
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大関正代 (c)朝日新聞社
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 3月25日の聖火リレーのスタートを前に、有名人ランナーの辞退が止まらない。歌手の五木ひろし、俳優の斎藤工、常盤貴子、大相撲の大関正代らが次々と辞退し、その多くは「スケジュールの都合」を理由としている。東京五輪組織委員会の担当者が言う。

【写真】もう一人の辞退者は?

「聖火ランナーは無報酬でお願いしており、交通費も自腹で負担してもらう。だから違約金などはないし、辞退されても、こちらとしては仕方がないとしか言えません」

 ランナーの代役は各都道府県の実行委員会らが選考し、改めて組織委に推薦する。石川県のPRランナーだった常盤貴子の代役は俳優の若村麻由美と発表されたが、全自治体が“代役”を用意できるわけでもなさそうだ。正代に辞退された本県の担当者は「補欠リストから繰り上がりで選ぶので混乱はない」と話すが、同県の補欠リストは全員が一般公募枠。有名人のPRランナーが減るのは避けられなさそうだ。

 本来、聖火ランナーは栄えある大役。埼玉県の公募ランナー・鈴木昭重さん(86)はこう語る。

「辞退者が相次ぐのはコロナなので仕方ないと思いますが、私は辞退するつもりはありません。一生に一度の晴れ舞台。中止せずになんとかやってほしいという思いです」

 1964年東京五輪の聖火台製造に携わった鈴木さんは、当時、開会式で国立競技場に入ってきた最終走者・坂井義則さん(故人)が聖火台に火をともす瞬間が忘れられず、憧れを抱き続けてきた。めぐってきた大役に、今年に入ってからも日々のランニングに励んできた。こうした強い思いを持つランナーがいるにもかかわらず、なぜ辞退者が相次ぐのか。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏はこう指摘する。

「背景には東京五輪の欺瞞と冷めきった世論がある。『復興五輪』というテーマが、いつの間にか『人類がコロナに打ち勝った証し』という虚言妄言にすり替わり、組織委内部のごたごたも反感を買った。東京五輪そのものが壮大なハリボテだと国民は気づいているんです」

 ランナーの辞退で国民の五輪熱がますます冷める悪循環となりそうだ。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2021年3月19日号