離婚させられ、支給された生活保護費まで巻き上げられ、愛する我が子が餓死に至るまで、人は精神を支配されてしまうものなのか。

 今回の事件について、同様の事件を扱う『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』『連続殺人犯』などの著書があり、北九州監禁殺人事件を起こした松永太死刑囚との対話も重ねてきたノンフィクションライターの小野一光さんはこう語る。

「手法としては、2002年4月に福岡県久留米市の看護師4人が逮捕された連続保険金殺人事件に近いと思います」

■過去の事件との類似点

 この事件では主犯の吉田純子元死刑囚(16年に死刑執行)が看護学校時代の同級生たちを支配し、医療知識を悪用して睡眠剤や空気の静脈注射で夫らを殺害。殺人罪2件と強盗殺人未遂罪、詐欺罪などに問われた。政界や警察関係者にも顔が利くという「先生」という架空の存在を仕立て上げ、自分がそのパイプ役として他の3人に降りかかったトラブルを解決したように見せかけて支配を強めていった。

 吉田元死刑囚は詐取した多額の保険金で久留米市内の高級マンションにペントハウスを所有、階下の部屋を3人にも買わせ、「吉田様」と呼ばせて女王のように振る舞った。(編集部・大平誠)

※【あなたの友人は大丈夫? 福岡5歳児餓死事件や過去の類似事件にみる“モンスター”の共通点】へ続く

AERA 2021年3月22日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」