当時5歳だった碇翔士郎ちゃんを餓死させた事件で、母親の碇利恵容疑者(39)とそのママ友の赤堀恵美子容疑者(48)が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。事件の背景には「マインドコントロール」があったとみられており、赤堀容疑者は無関係のママ友の一人を暴力団関係者に顔が利く「ボス」に仕立て上げ、恐怖を植え付けるなどして碇容疑者を支配したという。こうした身近に潜む“モンスター”から身を守るにはどうしたらいいのか。AERA 2021年3月22日号で、過去の類似事件や危険人物の特徴を取り上げた。
【あなたの友人は大丈夫? マインドコントロールを仕掛ける危険人物の特徴はこちら】
※【4人の看護師が夫を殺害…福岡5歳児餓死事件と「手法が近い」過去の事件とは】より続く
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背後の暴力団や闇の組織の存在をにおわせ、弱みを見せるとグイグイ付け込んでくる。このパターンは北九州監禁殺人事件や尼崎連続変死事件にも共通する。
■笑顔で近付き情報得る
起訴された事件だけで7人の死亡(6人殺害、1人傷害致死)が確認されている北九州監禁殺人事件は、松永死刑囚が虐待と拷問で支配した家族同士を殺し合わせ、死体の処理もさせたという犯罪史上でも稀な凶悪事件だ。
尼崎連続変死事件は、主犯格の角田美代子元被告(12年12月、起訴勾留されていた兵庫県警本部の留置場で自殺、享年64)が25年以上にわたり、血縁関係のない男女を多数集めて疑似家族のように共同生活させていた。彼らの実家に狙いをつけ、些細な弱みを見つけて乗り込んでは暴力や脅しで財産を奪ったり、親族同士で争うように仕向けて家族崩壊に追い込んだりして、養子縁組制度を悪用して次々に家族を乗っ取った。
この2大凶悪事件の主犯に共通するのは、笑顔で近づいて仲良くなり、情報を搾り取ったタイミングを見計らって豹変したとみられる点だ。
「松永も角田も暴力団の影をちらつかせながら、恐怖で人間を操ることにたけていました。相手がグループになった場合は社会と隔離させ、グループ内でターゲットを1人決めて徹底的に追い込んで弱らせた。あと、子供を人質に取っておくと、離れて住む親も支配の構造から抜け出せないことを熟知していました」(同様の事件を扱う著書があり、松永太死刑囚との対話も重ねてきたノンフィクションライターの小野一光さん)