松永死刑囚は類いまれな「聞き上手」だったという。娘とともに監禁された父親は、ニコニコと相槌を打つ松永死刑囚に過去のヤンチャ話を話すうちに、かつて横領めいたことを起こした経験を吐露してしまい、その件について認める文書を書かされた。一連の事件に深く関与した内妻の家族を呼び寄せる際には、娘が既に人を殺しているということを強調し、同居する全員が共犯関係であることを強く意識させたという。
■はっきり拒絶がカギに
著名人が霊能者などに傾倒して問題になるケースも多い。平成の大横綱、貴乃花が不調に陥った98年、突然兄の若乃花を「花田勝氏」と呼んで拒絶するようになり、懇意にしていた整体師から洗脳されているという疑惑がワイドショーを賑わした。
マインドコントロールとは異なるが、かつて霊感商法などが社会問題化した世界基督教統一神霊協会(現世界平和統一家庭連合)を巡っては、1992年に新体操の元五輪選手だった山崎浩子さんやトップアイドルだった元歌手の桜田淳子さんが合同結婚式に参加して話題になった。入信したタレントの飯星景子さんを、父親で作家の飯干晃一さんが「娘を取り戻す」と宣言して脱会させた経緯はワイドショーで連日報じられた。
また、教祖の麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(18年死刑執行)に率いられたオウム真理教は信者や敵対する弁護士一家の殺害、95年の地下鉄サリン事件へと凶暴性を極限まで高めて瓦解した。
最下部のリストは、マインドコントロールを仕掛けてくる危険人物の特徴をまとめたものだ。もし彼らから標的に定められたら、どう身を守ればよいのか。小野さんは言う。
「彼らに共通しているのは、被害者としての資質を選別してリスク回避をすることです。強く抵抗したり、第三者に相談に駆け込みそうだと見定めたりしたらそれ以上深追いしない。実際に弁護士に相談しようとした動きを察知した途端、標的から外した例がある。最初から高い山には登ろうとしないのです」
大事なのははっきりと拒絶の意思を伝えること。捜査機関の影がちらつけば、彼らは自ら去っていく。(編集部・大平誠)
<あなたの友人は大丈夫? マインドコントロールを仕掛ける危険人物の特徴>
(1)笑顔で接近、親切な聞き上手
一見面倒見がよく魅力的。親身になって相談に乗ってくれることが多い
(2) 脅しの材料を聞き出し豹変
つい家族の秘密や知られたくない過去を打ち明けてしまったら、その後の態度に注意を
(3) 他者と隔絶させ孤立狙う
第三者に相談させないよう周囲との関係を断たせる。「○○さんとは話すな」は危険なサイン
(4) 架空の黒幕をチラつかせる
「暴力団と関係がある大物」などとの親密な関係を誇示するのが常套手段
(5)共犯関係を作り上げる
悪事に引き込み、「やってしまった」と罪悪感を持たせることで逃げられなくする
※AERA 2021年3月22日号より抜粋