やっぱりプロレスラーはリングに立ってこそ。選手には場所を提供するから、後は彼らが自分でどれだけアピールできるかだね。チャンスだと思って存分にパフォーマンスして自分を売り込んでほしい。
その興行で俺はなにをするかというと、毎回ゲストを呼んで一緒に解説をする予定だ。自分が現役時代は解説にとやかく言われて腹が立つこともあったが、先日のNOAHの大会で久しぶりに解説をしてみて実感したのは、一番楽しいのは解説者だということだね! 自分で見て思ったことを話していれば、みんな「あぁ、そうなのかな」なんて納得してくれるしね。解説者ほどオイシイ商売はないよ(笑)。
天龍プロジェクトは団体のしがらみがないから、毎回違うゲストを呼んで、ライブ配信も行う。実況、解説の方は面白おかしいことになりそうだから、今のファンと昔のファンが融合してくれればいいなと期待している。
今年は俺にとっても新たな年になりそうだね。引退してからのんびりするつもりが、やることも多いし、いつも尻に線香花火をつけられている感じがするよ(笑)。
最後に、これから新生活を迎える人にアドバイスするとすれば、いつもニュートラルでいることだ。俺はいつも思っているんだが、自分で「こうだ!」と決めつけていると、違うことが起きたときにダメージが大きいし、身動きが取りづらくなる。相撲時代は「こうあるべき」と考える俺もいたが、そうすると軋轢(あつれき)や揉め事が多くなってね(苦笑)。それよりも、ニュートラルな気持ちや考えで、その時々で対処していく方がなんとなく生きていけるだろう。「将来こんなことがあるかも」と考えてもしょうがない時もあるし、どうにもならない時もある。その時にうまく対処して解決できれば明日が来るという考えだ。
新生活に向けてワクワクしている人、「こうなりたい!」と夢を持つ人も多いだろうし、その思いはとてもいいことだ。でもやっぱり世の中はうまくいかないこともあるし、特に日本では問題が起きても白黒はっきりつけず、あいまいにすることもあるだろう。だからこそ、なおさらニュートラルな気持ちで対応した方がいいと思う。それから、これは経験談からアドバイスするが、“金”の話になると必ず「あの時、ああしてあげただろう」という”義理人情”の話が出てくるから、そのときは気をつけることだ!(笑)。
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。