膝関節は、筋力低下で特に痛みが出やすい部分だという。
また、下肢の筋力が低下すると、歩いたり走ったりした際に転びやすく、骨折の危険性もある。
柔軟性の低下も痛みに直結する。例えば、股関節周りの筋肉が硬くなると、腰に余計な力がかかって腰痛の原因に。腰が伸びないと前かがみになりやすく、腰だけでなく背中にも痛みが出る。
バランスや俊敏性が低下すれば、転びそうになったときに姿勢を立て直したり、足を踏み出して体を支えたりといった、とっさの行動ができなくなる。結果的に転倒や骨折の危険が高まる。
「大事なのは、自分は大丈夫だと過信せず、運動機能の低下を“自覚”することです」(同)
その上で、時間をかけて徐々に運動強度を上げていくことが大切だ。
理想は、まずウォーキングなど、ラクにできる運動から始め、1週間ごとに強度を上げていく。運動後に痛みが出て翌日まで残る場合は、3日ほど休み、痛みがとれた段階で、それまでやっていた運動の半分ぐらいの強度から再開する。その間、痛みがない部位(足が痛ければ、上半身)なら、トレーニングをしても大丈夫だ。
感覚で体を動かすのではなく、しっかりスケジュールを立てて、また痛みなどがあったら臨機応変に対応しながら、運動機能を高めていこう。
ここまではコロナ禍の運動不足を問題視したが、自粛期間中も運動を続けていたから問題ない。そう思っている人も要注意──。そんな結果が日本臨床整形外科学会の調査で明らかになった。
調査は昨年の最初の緊急事態宣言が明けた後、7~8月に実施。整形外科(医院)に通う患者とその家族約1万2千人に、自粛前・中の運動の状況や自粛後の体の変化などを聞いた。
すると、60代以上では5~6割が「運動を行っていた」と回答。自粛前と自粛中とでその割合はほとんど変わらなかった。運動頻度は、60代、70代では「週2~3回」、80代以上ではなんと「毎日」が最多だった。運動の種類はウォーキングや散歩、ジョギングが約半数を占めた。