M山:そんなに長生きしないと思っているのですが……。
前野:M山さん、今は「人生100年時代」です。「長生きして困った」とならないように赤字が膨らむ理由をいくつかみてみましょう。
■収入を増やし、支出を減らし、できたお金を運用する
M山:娘の教育費でしょうか。2人とも小学校~高校は公立、大学は私立理系に進ませたいです。
前野:私立理系の学費は、年間約170万円です。見落としがちな支出が、住居のメンテナンス費です。冷蔵庫、エアコンなどの家電一式を買い換えると、総額数十万~100万円かかり、これが10年単位でやってきます。
M山:それは想定外でした……。
前野:貯蓄を増やすには、3つの道があります。「収入を増やす」「支出を減らす」「お金を運用する」です。まず「収入を増やす」点から考えましょう。
M山:60歳で退職した後は、再雇用で働き続けるつもりです。手取りは160万円くらいなので、妻が50歳になったら、彼女にもパートで同じくらいの収入を作ってもらおうと考えています。
前野:奥様も手取り年収160万円で働けば、年間320万円の収入増になります。仮にM山さんが60歳から5年間、再雇用で働いた場合、公的年金の受け取り額は年間8万円ほど増えます。また、M山さんの場合は、奥様が7歳年下なので、奥様が65歳になるまで、「加給年金」という家族手当も、年間39万円上乗せされますよ。
M山:それはうれしいですね!
■生活費は家族構成に適した金額に見直す
前野:年金を70歳まで繰り下げると受給額は1・42倍になります。老齢厚生年金を受け取るまでの間、加給年金も停止されますが、老後のゆとりは増えるので検討してみてください。
M山:住宅ローンは73歳まで続くのですが、繰り上げ返済したことはありません。今住んでいる土地は、7千万円ほどの価値があるはずで、将来は「リバースモーゲージ」を考えていました。
前野:自宅を担保に老後資金を借り、死後に担保不動産を売って返す高齢者向け融資のことですね。その場合は、ローン完済が必要です。退職金で完済しつつ、M山さんの場合は貯蓄額も増やしたいところです。次は、2つ目の道「支出を減らす」を考えましょう。現在、月あたりの支出は80万円でしたね。そのうち半分を占める生活費40万円を見直しませんか。40万円の内訳を教えてください。