「大丈夫じゃない状態って、どうなることですか?」
と聞いてみました。
顕さんは、怖かったのです。最初にいただいた資料にも書いてありました。顕さんは親の期待通りに生きてきたよい子でした。おおむね親の期待を満たす成績をとり、親が喜ぶ会社を選びました。唯一、親とぶつかったのは、瑠香さんとの結婚でした。両親はいまだに瑠香さんを気に入っていないことはなんとなくわかります。
だからこそ、無意識のうちに、瑠香さんが「よい妻」になったり、孫の顔を見せたら「和解」できるのではないかと思って頑張っていたのでした。つまり、大丈夫じゃないというのは、和解できないことです。
ここまで来て、構図が明らかになりました。
顕さんは瑠香さんのことも両親のことも好きで、両親は瑠香さんのことを快く思っていない。この状態を顕さんが受け入れがたく“怖く”感じている、それがこの一連の話のスタートラインだったわけです。
「こういう場合、どうしたらいいんですか?」
また、顕さんが知識を求めてきます。
「顕さんは、何がどうなったらいいですか?」
と質問返しをします。
「みんなが普通に仲良くなれば」
多くの方がこう言いますが、「みんな」「普通」「仲良く」のいずれも魔術的用語で、これらの言葉を入れて考えたり話したりするとどこにも行きつかなくなりますので、魔法を暴きます。
「ということは、ご両親が瑠香さんを好きになるように、変えたいということですか?」
とお聞きすると、
「いや……どちらかというと、瑠香に両親を好きになってもらうように変わってほしいというか……」
「それって、瑠香さんはどう感じると思いますか?」
とお聞きすると、
「それが正しいことだというのはわかると思いますが……」
とおっしゃいますので、瑠香さんに聞いてみます。
「顕さんのお話、どう感じますか?」
瑠香さんは、おっしゃいました。
「私、このことに怒ってたのがわかりました。顕は弁が立つのでもっともなことを言うけど、結局、親が一番で、私にはそれに合わせろと言ってきたんです。私の気持ちなんか考えてないんです」