写真はイメージ(GettyImages)
写真はイメージ(GettyImages)

 カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く連載「男と女の処世術」。今回のテーマは「夫婦のやりとりには“体験”が必要」。なんでもかんでもリモートになって、夫婦関係で見落としていることはありませんか? 

【あなたは大丈夫?夫婦間のモラハラ チェックリストはこちら】

*  *  *

 新年度に入り、なんでもかんでもリモートの2年目に突入しました。人と人が関わる関わり方の方法(大きく分ければ、直接会うのか、メールや電話、Zoomなどの直接でない手段を使うのか)の性質と、それを利用して行われるコミュニケーションがどう進展しやすいかには関係があります。逆に言えばコミュニケーションに使う方法と、そこでやり取りしたいコミュニケーションの内容に親和性がないと、うまくいきにくくなります。

 たとえば、上級者向けのITがらみのユーザーサポートは電話よりもメールやチャットなどテキストによるコミュニケーションの方が向いています。やり取りされる情報は、双方が容易に文字(や画像)にすることができて、文字の方が記録を残す意味でも、一覧性でも、リンクなどを参照する時も有利だからです。一方、初心者は、何がわからないのかすらわからないのでメールやチャットなどのテキストによる対応はハードルが高いのは当然です。そのため最近のユーザーサポートの中には、説明するのではなくて、リモートでこちらのPCを遠隔操作してユーザーの代わりに解決してくれるやり方をするのもあります。これはコミュニケーションというより対処を提供しています。

 別の例を考えると、毎日、「今日はこういうメニューで運動しましょう」というメールが来るサービスと、パーソナルトレーナーがいて横で「はい、次はこれをしましょう」というのでは全然違います(少なくとも私は)。

 前者だと、やってもせいぜい3日で、後はメールを読み飛ばすようになると思います。しかし、パーソナルトレーナーがいたら聞き流すことはできないですし、次の予約も深く考えずに入れてしまい、結果的に続けてしまいそうです。つまり、メールと対面では、今日はどういう運動をすべきか、という「情報」の部分は同じであっても「効果」、別の言葉で言えば「気持ちを動かす力」が全く違います。それをもたらしているのは、パーソナルトレーナーという生身の人との「体験」です。

 カウンセリングにおいでになる方は、何かに困っておられるので、ユーザーサポートと似た感じから始まることが少なくありません。

 顕さん(仮名、30代、外資系勤務)は、時間を効率的に使いたいということで、事前に資料を送ってこられました。

著者プロフィールを見る
西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

西澤寿樹の記事一覧はこちら
次のページ
カウンセリングの事前の資料には妻が狂乱したエピソードも