カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く連載「男と女の処世術」。今回のテーマは「夫婦のやりとりには“体験”が必要」。なんでもかんでもリモートになって、夫婦関係で見落としていることはありませんか?
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新年度に入り、なんでもかんでもリモートの2年目に突入しました。人と人が関わる関わり方の方法(大きく分ければ、直接会うのか、メールや電話、Zoomなどの直接でない手段を使うのか)の性質と、それを利用して行われるコミュニケーションがどう進展しやすいかには関係があります。逆に言えばコミュニケーションに使う方法と、そこでやり取りしたいコミュニケーションの内容に親和性がないと、うまくいきにくくなります。
たとえば、上級者向けのITがらみのユーザーサポートは電話よりもメールやチャットなどテキストによるコミュニケーションの方が向いています。やり取りされる情報は、双方が容易に文字(や画像)にすることができて、文字の方が記録を残す意味でも、一覧性でも、リンクなどを参照する時も有利だからです。一方、初心者は、何がわからないのかすらわからないのでメールやチャットなどのテキストによる対応はハードルが高いのは当然です。そのため最近のユーザーサポートの中には、説明するのではなくて、リモートでこちらのPCを遠隔操作してユーザーの代わりに解決してくれるやり方をするのもあります。これはコミュニケーションというより対処を提供しています。
別の例を考えると、毎日、「今日はこういうメニューで運動しましょう」というメールが来るサービスと、パーソナルトレーナーがいて横で「はい、次はこれをしましょう」というのでは全然違います(少なくとも私は)。
前者だと、やってもせいぜい3日で、後はメールを読み飛ばすようになると思います。しかし、パーソナルトレーナーがいたら聞き流すことはできないですし、次の予約も深く考えずに入れてしまい、結果的に続けてしまいそうです。つまり、メールと対面では、今日はどういう運動をすべきか、という「情報」の部分は同じであっても「効果」、別の言葉で言えば「気持ちを動かす力」が全く違います。それをもたらしているのは、パーソナルトレーナーという生身の人との「体験」です。
カウンセリングにおいでになる方は、何かに困っておられるので、ユーザーサポートと似た感じから始まることが少なくありません。
顕さん(仮名、30代、外資系勤務)は、時間を効率的に使いたいということで、事前に資料を送ってこられました。