──昨年、文科省は対面授業の割合が少ない大学名を公表した。その意図は。

 対面授業が少ないことについて、学生は「助けてくれ」、大学は「学生は困っていない」という。ならばその実態をファクトとしてとっておこうと思った。どちらの肩を持つということではなく、オンラインの割合はこの程度ですよ、というのを、その大学をめざす受験生にもわかりやすく知らしめたかった。

 公表には大学から批判の声も大きかったが、受験生、保護者や学生からは、公表してもらってよかったという声をずいぶんいただいた。

 学生に寄り添った取り組みをしている大学を文科省がグッドプラクティスとして紹介したが、そういう大学は進学希望者が増えていると聞く。緊急時に学生に寄り添ってくれる大学なのかどうかは、これからの受験生にとって選択の指標のひとつになるのではないか。

──コロナの影響が長期化し、経済的に困窮する学生はさらに増える可能性がある。

 文科省は「学生の“学びの支援”緊急パッケージ」を昨年12月に改訂し、各大学に示すとともに、丁寧かつ親身な相談対応をとってもらうように大学に要請した。

 また2020年は高等教育の修学支援新制度の元年。家庭の経済状況が困難でも大学に進学できる環境が整ってきた。コロナにより実家の収入が減った学生も、この制度を使えるようにした。また、生活費+αをアルバイトで賄っている学生への一時給付金も支援した。

 だが状況が長引くとすれば、大学とともに考えないといけない。多くの学生さんから、使っていないのに図書館の施設利用料を払うのはおかしいとか、十分な授業ができていないから学費を戻すべきだという声があるのは承知している。

■「国が援助するなら学費を下げる」という大学の論法には違和感

──学費を下げることを大学に求める考えはあるか。

 文科省が学費を半額にしろという人がいる。だが、われわれ文科省は、国立、私立大学を含め、個別の大学の学費を決める立場にはない。また、文科省が援助するならば学費を下げてもいい、という大学の論法には違和感がある。志を持って、その大学を信頼して入ってくれた学生を、まずは大学が守るべきではないか。

 昨年の緊急事態宣言の際、オンライン環境に対応するためいち早く学生に支援金を支給した大学もあれば、1円も支給していない大学もある。一度地方から出てきてアパートを借りて、また地方に戻ったという学生は、対面授業がスタートしたら再びアパートを借りて、礼金、敷金を払わなければいけない。あるいは大学に毎日通わないので通学定期を持てなかったり、実家から通う際には大変な交通費がかかったりしている。自分の大学の学生を、一義的には大学がちゃんと心配してあげてほしい。

 それでも大学として手が届かない、困ったということがあれば、文科省が財政支援メニューをさらに上乗せすることもできるだろう。納税者からみて、このような支援を今の学生にするべきだという公費の支出の仕方があれば、それは堂々と行っていきたい。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
「歴史がある大学がいい大学」なのか