先日、菅首相がファイザーのブーラ最高経営責任者と電話で会談し、9月までに国内のすべての接種対象者に必要な数量を確保すべく、追加供給を要請したという報道がありました。しかしながら、ワクチン接種で圧倒的に遅れをとっている日本で、新型コロナウイルスの変異株が全国的に広がりを見せている今、これ以上の感染を抑え込む前にワクチン接種を順調に遂行できるとは思えないのは私だけでしょうか。
英国では、新型コロナウイルス感染症と、心筋梗塞、心不全、脳卒中、血栓塞栓症など心血管疾患との関連を調査することができるリソースが開発され、人口の96%超の5,440万人の医療情報が登録されたといいます。ワクチン開発だけでなく、新型コロナウイルスに関するさらなる調査がこうした医療連携で進むことは間違いありません。
4月14日には、夏に開催を予定している東京オリンピックとパラリンピックの再考をすべきではないかという社説が、イギリス医師会雑誌(British Medical Journal)にて公開されました。現段階で日本は新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めていないということ、ワクチン接種の遅れや検査能力の限界は政治的なリーダーシップの欠如に起因していること、そして、世界全体で新型コロナウイルスによるパンデミックを封じ込め、命を救う必要性があるにもかかわらず、国内の政治的・経済的な目的のために「東京2020」を開催することは、世界の健康と人間の安全保障に対する日本の責務と矛盾していると言います。
第4波、緊急事態宣言、といった言葉も、再び聞かれるようになってきましたが、医療従事者や高齢者以外のワクチン接種がいつになるか不透明なまま感染予防や自粛を強いるだけの対策を行うのではなく、今一度、世界各国のあらゆる対策を参考にし、国内での感染対策に反映させる必要性があるのではないでしょうか。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員