■とらえどころのない宇髄の態度

「音柱」として圧倒的な強さをみせる宇髄だが、普段の彼は、明るくおおらかな話し方をする。階級が下の隊士が上官である宇髄の命令にそむいた際にも、一応は怒ったようなふりをしつつも、容赦なく言うことをきかせたりはしない。

 ふざけているのか、冷めているのか、真剣なのか、白けているのか、宇髄の態度はつかみどころがない。戦闘時に大けがを負った時も、鬼の毒を致死量くらわされた時にも、表情からは、彼がどれくらい追い詰められているのか判別できない。だが、そんな宇髄がはっきりと感情をあらわにした場面があった。

■仲間を「生かそう」とする

 「遊郭に棲む鬼」捜査の際、彼に従った3人の「くの一」(※女性の忍者)が連絡を絶ってしまう。同じく潜入中の嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)が「死んでんじゃねぇの?」と言うと、宇髄は怒る。さらに、善逸が行方不明になると、炭治郎と伊之助に「お前たちには悪いことをした」と告げ、この2人を鬼から逃がそうとする。

 階級が低い少年とはいえ、炭治郎らも鬼殺隊の一員だ。よほどのことがなければ撤退の命令は出ない。それでも宇髄は、彼らを「生かそう」とする。その一方で、自分は任務に命をかけるのだった。

■初めてもらした宇髄の「弱音」

 宇髄たちが「遊郭の鬼」と戦うことになったのは、無限列車の戦闘で、炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)を亡くした直後のことだった。煉獄・猗窩座戦と同じメンバーが、今度は宇髄とともに、再び実力者「上弦の鬼」と戦わねばならなくなった。煉獄を失った悲しみに、身を焼かれるように苦しみ続ける炭治郎は「今度こそ誰も死なせない」と力が入りすぎている。

 しかし、煉獄の死に、強い影響を受けていたのは、炭治郎だけではなかった。宇髄もまた戦闘中に、ありし日の煉獄の姿を思い出す。宇髄の実力を目にした「遊郭の鬼」に、「選ばれた才能だなぁ」と言われるが、宇髄は「俺が選ばれてる?ふざけんじゃねぇ」と怒りをにじませる。

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「俺は煉獄のようにはできねぇ」