■値下げ戦争の末、コスト・ゼロ時代に
「失敗も成功も含めて、自分が真剣に投資をした経験が、これから投資をはじめる人たちにきっと役立つと思いました」と、証券業界に飛び込んだ動機を振り返る。
当時、パソコンを使った株取引は手数料の安さから瞬く間に流行したが、高齢者にはハードルが高かった。
「窓口のある証券会社の高い手数料や営業マンの強引な勧誘を逃れてネット証券で取引したくても、パソコンに触れたことがないからできない人が多かったんです。
今の70代の方はパソコンを扱えますが、当時はダブルクリックができない人もけっこういて、株取引のイロハや自社のサービスをお知らせする前に、『はじめてのパソコン教室』を開くところからはじめました」
ネット証券乱立時代の初期、株の売買手数料は最低1000円前後だった。今では約定代金50万円以下だと110円や、無料のところもある。
安い手数料は投資家にはうれしいが、巨額のシステム投資が必要なネット証券。薄利多売にも限度がある。
「株式の売買手数料に加え、FX(外国為替証拠金取引)のコストもかつての10分の1くらいに縮小しました。僕自身は10年ほど前から『デフレ業界』になってきたと感じていましたね。
そしてアメリカで一昨年起きた手数料無料ブームが、日本にも飛び火しました。今はネット証券が株の現物取引だけでやっていくのは難しい」
投資信託(以下、投信)や他の金融商品も充実させ、多様なニーズに応える必要がある。
「アメリカでは情報を買うビジネスモデルが確立されているんですよね。上手に運用する人が必要な情報にお金を払うスタイルです。でも、日本は『情報と水はタダ』の感覚が強い……」
単純なアメリカ追随ではうまくいかない理由は、日本独特の証券ビジネスにあるようだ。
福島さんは企画広報部長の他、投資教育を担う組織であるマネックス・ユニバーシティの室長も兼任している。
「日本では資産運用に株式を利用している人がたったの12%というデータがあります。アメリカは学校で投資を教えるので、株や投信にお金を投じることへのハードルが低い。しかし、日本人は投資教育を受けていません」
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