わたしは『ジャパニスト10』を買おうと、通販サイトを調べた。どこにもない。『10』は去年の九月に販売終了となっていた。ヤフオク!やメルカリにもなかった。大手の家電量販店にもいくつか電話をしたが、無駄だった。
販売終了から一年も経ってないのにどこにもないて、おかしいやろ──。困ったわたしはツテをたどり、パソコン周辺機器を製造販売している上場企業の業務担当役員に事情を話して、ソフトを探してもらいたいと頼んだ。役員はすぐにでも入手できるでしょうといってくれたが、半月経っても音沙汰なし。
こらほんまにあかん──。ほとほと困ったわたしは知人のテレビ放送局相談役に電話をした。するとその日のうちに秘書室長から、ソフトを見つけましたというメールが入った。ありがたい。秘書室長が放送局の技術部をとおして富士通のソフト販売代理店に問い合わせをしてくれたらしかった。
家にとどいた『ジャパニスト10』で、Mさんは新しいパソコンに親指シフトをインストールしてくれた。作動良好。グーグルもユーチューブも格段に早い。これで原稿も早くなったらいうことはないのだが。
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する
※週刊朝日 2021年4月30日号