写真はイメージです(GettyImages)
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怪しいサイトは巧妙に作られている(若尾医師への取材から作成) (イラスト/iStock)
怪しいサイトは巧妙に作られている(若尾医師への取材から作成) (イラスト/iStock)

「100%完治」「副作用がない」……病気について検索すると、こうしたフレーズを見ることも少なくない。しかしこれらは本当なのだろうか? ネットにあふれる医療情報の現状をまとめた前編につづき、怪しい情報にだまされないようにはどうしたらいいか、医師に聞いた。現在発売中の『手術数でわかる いい病院2021』(朝日新聞出版)から紹介する。

【イラスト】その医療情報、正しい?こんなウェブサイトに注意!

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「インターネットで目新しい情報を見つけたときは、常に疑ってかかる癖をつけてほしい」と国立がん研究センターの若尾文彦医師は話す。「注意すべきポイント」は大きく3つある。

 まず、いつの情報なのか(=古くないか)。医学の進歩は目覚ましく、それまで信じられていたことでも新たな知見が出てきたり、間違いが判明したりすることは少なくない。「3年前まで」が古さの目安になる。

 2つ目は、誰がどのような目的で発信しているのか。一般に、医療分野で最も信頼度が高い発信元は、国立がん研究センターのような「国や公的な医療・研究機関」だ。公共性が高い病院や製薬会社が病気や治療の情報を提供している場合もあるが、自院の受診者数を増やしたい、自社の薬を売りたいなど別の目的が隠れていることもある。また発信者が著名な医師でも、怪しいサイトはたくさんある。

 3つ目は、何を根拠にした情報なのか。「最先端の治療」などと書いてあると、最良の治療だと飛びついてしまいがち。しかし最先端の治療はまだ研究段階で、臨床試験によって安全性や効果が証明された方法のほうが信憑性ははるかに高い。その最たるものが標準治療だ。

「標準治療は、厳格なルールに基づく臨床試験によって、科学的に有効であることが確認された『最良の治療』。健康保険も適用されます。患者さんは標準という言葉を『普通』だと勘違いしてしまいがち。『標準よりも最先端の治療を受けたい』と検索に走る人も少なくありません」(若尾医師)

 3つのポイントすべてをクリアした優良サイトが、国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」だ。各種がんの症状、検査、治療といった基礎知識、病院検索、療養情報、統計など、2万ページに及ぶ。

「日本はこうした公的機関が出しているサイトは少ないですし、患者さんや家族がいい情報を求めていろいろ検索する気持ちもわかります。ただインターネット上には間違った情報も多く判断が難しいのも事実。探すところまではいいのですが、最終判断はしないこと。主治医など医療者に『この情報は大丈夫ですか』と、確認してほしい」(同)

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「主治医が不満だからネットに頼る」は危険