■検索は目的を絞る 次々検索するのは危ない
医療や健康の相談に応じる「暮らしの保健室」を運営する川崎市立井田病院の西智弘医師は「目的を決めて検索を」と助言する。
「ネットは、検査の内容や専門用語などをピンポイントで調べるには、便利なツールです。でも明確な目的を決めずに、『もっといい治療法があるかもしれない』などと次々検索していると、怪しいサイトや広告にたどり着いてしまいやすい」
さらに西医師はこう続ける。
「主治医の話を補完するためにネットを使うならいいのですが、『主治医に不満があるからネットに頼る』という使い方は危険。長く続くがんの治療を信頼関係なしで乗り切ることはできません。それこそネットを活用してセカンドオピニオン先などを探したほうがいいでしょう」
■ネットで不安なことは医師に相談しよう!
「Yahoo!ニュース」など、ネットでも意欲的に医療情報を発信する、総合南東北病院外科医長の中山祐次郎医師。ネットで検索をして困ったときの対処法を聞いた。
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病気になれば、だれもが「より良い治療を受けたい」と思うでしょう。昨今は、患者さんが医師に提示されたのとは違う治療をインターネット上で見つけて迷いが生じたり、「こんないい治療があることを教えてくれなかった」と主治医に不信感を抱いたりすることも起きています。
通常、医師はそれぞれの患者さんに最適であると判断した治療の説明をおこないます。たとえば進行した大腸がんの人に、早期がんのみを対象にした大腸カメラのみによる治療の話はしません。一方、腹腔鏡下手術もできるのに、自分の病院では実施していないからと伝えずに開腹手術の話だけをする場合もある。あるいはこの病院では無理だけど、他の病院の技術力が高い医師がやれば可能ということもあります。
迷っているなら、主治医に「この治療はどうですか」と聞いてみましょう。患者さんのメリットを第一に考える専門家の医師ならきちんと説明してくれ、一番いい方法を考えてくれるはず。納得のいく答えが得られなければ、セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。がんは個別性の高い病気。患者さんの病状に合わせたオーダーメイドの助言ができるのは、ネットではなく、患者さんをよく知る主治医なのではないでしょうか。
【監修】
・若尾文彦(わかお・ふみひこ)医師
国立がん研究センターがん対策情報センター長
・西智弘(にし・ともひろ)医師
川崎市立井田病院緩和ケア内科/一般社団法人プラスケア代表理事
・中山祐次郎(なかやま・ゆうじろう)医師
総合南東北病院外科医長
(文/熊谷わこ)
※『手術数でわかる いい病院2021』より