入江のように長く日本代表で活躍するベテランの存在はチームにとって重要です。練習への取り組みを間近に見ることで若手が学ぶべきことがたくさんあります。入江は12年ロンドン五輪で背泳ぎとメドレーリレーで銀2個、銅1個を獲得。2大会ぶりのメダルを目指して努力する姿を見ると、「メダルを取ってほしい」と思います。
五輪の大舞台でメダルを取るためには「周囲から応援されるような選手にならないといけない」と言ってきました。アテネ、北京両五輪の平泳ぎで2大会連続2冠の北島康介、バタフライ、リレー種目でリオ五輪まで3大会連続メダルの松田丈志ら結果を残した選手は、自分のために泳ぐことが自然とチームの雰囲気を良くして、鼓舞することにつながっていました。
「チームのために頑張ります」という段階はまだ発展途上で、それぞれが個人の目標を突き詰めていくことで、結果としてチームの力が上がっていく。それが競泳の目指すべき方向だと思います。
ジャパンオープン(6月3~6日、千葉県国際総合水泳場)の前に代表の2次合宿があります。それまで所属チームでの練習が中心になりますが、オンラインなどを活用してコミュニケーションをとっていきます。(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2021年5月7-14日合併号