「オレは狙って左中間に打てる。みんなホームランになる」というのが理由で、「本拠地は味方の有利にするものだ」という提案は受け入れられた。
そして、本拠地開幕戦となった4月11日の西鉄戦、7番サードでスタメン出場したスペンサーは、満を持して打席に立ったが、左中間を意識し過ぎたのか、2回2死一塁、4回2死の1、2打席目は連続三振。7回1死の3打席目も三ゴロに倒れ、3打数無安打2三振。せっかくのアイデアも、狙ったところに打球が飛ばなければ、意味がない。
今にして思えば、38歳になり、前年も20本塁打に終わっていたスペンサーが、パワーダウンした分を補うために、提案したとも推測できる。
とはいえ、同年スペンサーは、自身最後の30本塁打を記録し、阪急のリーグ初Vに貢献。西宮で10本打ったのだから、それなりに効果はあったようだ。
今回紹介した3人は、プロで結果を出すためには、時には「何でもやってやろう」というチャレンジも必要なことを教えてくれている。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。