外出自粛に在宅勤務、ことあるごとのアルコール消毒、手洗い、うがいにマスク着用……。長引くコロナ禍で日々の暮らしは窮屈だ。電車の中やスーパーでくしゃみでもしようものなら、白い目で見られるご時世。安らげる場所は家しかない、か。だが、家族と過ごす時間が増えたことで居心地の悪さを感じている人は、意外なほど多い。終わりの見えない息苦しさは、限界なのだろうか。
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「仕事中なんだから、今やることないだろう! 静かにしてもらえないか」
「あなたが普段からやらないんだから、今しかできないでしょう!」
平日の昼下がり。関西圏のマンションのリビングで、アラフォー夫婦のバトルが勃発した。
電子機器メーカーに勤める夫のTさん(38)と、大手銀行で事務職のY子さん(35)。互いに在宅勤務の身だ。仕事の合間にY子さんが掃除機をかけ始めたことでTさんのイライラが募り、つい語気を強めてしまった。
「普段から家事は基本的に妻に任せきりで、その不満が爆発してしまったようでした。たまに風呂掃除とかやっていたので、分担がうまくいっていると思い込んでいました。でも、何も平日の勤務時間中にやらなくてもいいのではと……」
Tさんはそう主張したが、「夜に掃除機はかけづらい」「休みの日が掃除でつぶれるのが嫌」「せっかく家にいるのだから、できるときにやってしまいたい」とたたみかけられ、反論できなくなってしまった。
「家にいると妻の視線が気になるようになってしまいました。小言を言われるくらいなら出社したほうが精神的に楽」
こうした夫婦間のトラブル、思い当たる節がある方も多いのではないか。恥ずかしながら、記者もそのひとりだ。
在宅勤務で自宅のダイニングテーブルが仕事場になり、卓上は常に資料が散乱。食事はちゃぶ台で取るようになり、妻の「片づけないの?」という視線が痛い。その都度片づけられない自分が当然悪いのだが、「仕事なんだから」を免罪符に放置していた。