せめて、やろうとした気概や意欲はほめてもらいたい。そんな気持ちに寄り添うように、石原さんも同居の家族にこんな助言をする。
「洗濯物の干し方やたたみ方ひとつとっても、慣れていない人がやれば、しわが寄ってしまい、相手に不満を感じることもあるでしょう。ただ、小さなイライラが積み重なれば関係は悪化する一方です。相手の家事が未熟だとしても、不満より先に感謝を伝えることを優先してください」
だが一方で、立命館大の筒井淳也教授(家族社会学)からは、夫婦間の家事をめぐってこんな話を聞いた。
「夫が家事の時間を増やしても、妻の家事時間はびっくりするほど減っていないという報告があります。ですから、家事はいかに相手の負担を減らせるかを考えることが大事です」
例えば夫が子どもを風呂に入れるときも、前段階の準備は一切しないなど“やってる感”をアピールするだけでは、妻の負担を減らせず、戦力になり切れていない。
コロナ禍で働き方が変わった今、お金を稼ぐ労働と家事や育児を分けて考えるのではなく、どちらも同じ「仕事」として認識しないといけないと筒井教授は強調する。
「夫は家事に不慣れであればしっかり覚え、妻は夫が覚えるまでは我慢する。会社で新人を育てるのと同じように考えるのがいいかもしれません」
先輩が我慢しきれずに後輩の仕事を全部やってしまえば、負担のバランスは変わらず、後輩は仕事を覚えられない。ある程度は許容する寛容さを持ち合わせ、家事の分担を明確にする。その際はやり方も共有したうえで、「任せたら口出ししない」とルール化するのもいいという。
家で居心地の悪さを感じているのは、在宅で勤務する子ども夫婦と同居する高齢者とて、例外ではないようだ。
「娘夫婦が在宅勤務になって、自分の家なのに仕事場にお邪魔しているような感じがしています。何となく緊張しながら生活している感じです」
電話越しに記者にこう嘆くのは、本誌編集長の母親(85)だ。