このタイプの牝馬ではヴィルシーナの名前を挙げたい。2012年の牝馬クラシック路線で桜花賞、オークス、秋華賞の全てを制したのは名牝ジェンティルドンナだったが、その3戦で2着だったのはいずれもヴィルシーナ。秋華賞トライアルのローズSを含めれば同じ相手に4戦連続で2着だった。

 しかも目の上のたんこぶだったジェンティルドンナが不在のエリザベス女王杯でも、伏兵レインボーダリアに強襲されて2着。古馬になってからはヴィクトリアマイルを2連覇したように実力は申し分なく、クラシックでは相手が悪かったとしか言いようがない。

 三冠馬に泣かされたといえば、かのディープインパクト世代(2002年生まれ)で皐月賞2着、ダービー3着、菊花賞4着だったシックスセンスも該当する。同馬は暮れの香港遠征でもG1香港ヴァーズで2着だった。ちなみにデビュー2戦目に未勝利勝ちして以降は上記のように惜敗が続いて「最強の1勝馬」の称号をいただいていたが、結果的に引退レースとなった06年の京都記念で重賞初勝利はなんとか手にした。

 シックスセンスの一つ下の世代にあたるドリームパスポートも、皐月賞とダービーは二冠馬メイショウサムソンの前に2着と3着。菊花賞で宿敵には先着したものの、上がり馬ソングオブウインドの2着だった。さらにジャパンカップではディープインパクトの2着と、こちらもやはり相手が悪かった。

 2011年の三冠馬オルフェーヴルに敗れ続けたのはウインバリアシオン。皐月賞には間に合わなかったものの青葉賞を制して臨んだダービーから神戸新聞杯、菊花賞までオルフェーヴルの2着続きだった。翌12年も天皇賞(春)こそ11着と大敗したオルフェーヴルに先着したものの自身も3着どまりで、宝塚記念と有馬記念ではオルフェーヴルの4着と2着。さらにオルフェーヴル引退後の14年の天皇賞(春)でも2着で、引退するまでG1制覇には届かなかった。

 今年は昨年に無敗でクラシックを制して三冠馬となった牡馬のコントレイルと牝馬のデアリングタクトが揃って黒星スタートとなる一方で、皐月賞と桜花賞はそれぞれエフフォーリアとソダシが無敗で制覇。早くも新たなスター候補誕生に沸いているが、勝ちきれずとも善戦を続ける馬たちにも目を向けてもらえると幸いだ。(文・杉山貴宏)

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