掲載する写真に添えるためのサインをお願いすると、星野さんはいつもの「源」のサインの下に小さく「ひらまさ」と書いた。自分のサインを書き終えた新垣さんは星野さんの様子をちらっと見ると、こちらがお願いするまでもなく同じように「みくり」と書き足した。

 星野さんが17年3月に発表したエッセー集『いのちの車窓から』(KADOKAWA)には、「新垣結衣という人」という章がある。

<来る日も来る日も撮影があり、夫婦という設定から二人だけのシーンが多く、いつも一緒にいるけれど、一日に一回はこの人は素敵だと思う場面がある。>
<役でかけているメガネのレンズに指紋が付いてしまい、衣装で拭くのも良くないなと思い、持道具さんを探そうと顔を上げると、隣にいた結衣ちゃんが既に持道具さんに向かって小さく手招きをしていた。驚いて「ありがとう」と言うと、「いえ」と顔を伏せる。彼女は本当に周りをよく見ている。>

「ふたりきり」の前シリーズの本誌対談連載「音楽の話をしよう」(16年4月~17年3月)では、「逃げ恥」の脚本家・野木亜紀子さんをゲストに迎えた回で新垣さんの話題に。この時も星野さんは「さりげない気遣い」に目を留めている。

野木:紅白歌合戦で恋ダンスを照れながら踊るガッキーも超かわいくなかったですか?

星野:いや、かわいかったですよ。でも彼女は、音楽家が主役の場で出しゃばったらいけないと思ったんじゃないですかね。だから動きも小さかったんじゃないかなって。それなのにカメラがぐいぐい来ちゃったから(笑)。

野木:律義な人ですからね。やらなきゃと思ったんだろうなあ。

星野:そこがいいですよね。

 ところで「愛」というものについて、星野さんはアルバム「POP VIRUS」に収録のインタビューでこう語っている。

<「愛してる」って言葉が好きじゃないっていうのは前から言ってることですけど、愛って人と人との間にホワッとあるものだと思っているから、「愛をしてるぜ!」というのは日本語としておかしいでしょと思っちゃう(笑)。すごく好きな人に気持ちを伝えるのにも「愛してる」という言葉ではどうも足りないと思っちゃうんですよね。>

 二人がいつしか発生した「ホワッ」を感じ取ることは、そう難しくはなかっただろう。

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