安易に移住を決めると失敗のもと。まずは近場で「プチ移住」を試してみては。国や自治体が様々な支援策を用意しているので、うまく活用したい。「近郊移住」を特集したAERA 2021年5月31日号から。
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大都市の生活に慣れた人が、いきなり里山や海辺の小さな集落に移住すると、あまりの変化に耐えられなくなる恐れがある。とりわけ障害になるのが、地元の人たちとのコミュニケーションギャップだ。
移住者に体験談を聞くと、
「地元の消防団の訓練などの細かな決まり事があって、息が詰まりそう」
「毎日のように採れたての野菜が玄関前に置かれていて、プレッシャーになる」
地方には濃密な人間関係がある。近所付き合いとは無縁だった人にとっては、けっこうな重荷になるというのだ。もちろん都会からきたという上から目線はアウト。かといって、へりくだってばかりでは良好な関係を構築できない。せっかくの生活が色あせたものにならないためにも、移住体験は欠かせない。
■まずは賃貸で移住気分
現実的なのは、いまの住居からそう遠くない場所に家を借りてみることだ。首都圏や関西だと、都心から公共交通機関で1~2時間の範囲が目安。いろんな自治体が農業や漁業体験をしていて、無料で参加できるケースもある。さほど不便を感じずに「移住気分」が味わえる。
短期間でも実際に住んでみると、地元でしかわからない情報が得られる。ある例を挙げると、
「ここならやっていけそうだと物件を探していると、格安の建売住宅が見つかった。地元の人に話したところ、『あの場所は数年前までごみ捨て場だった』といわれてビックリした」
外れの物件をつかまされなくてすんだというのだ。
ほかに地方自治体の支援制度を使うのも手だ。例えば福島県は移住希望者向けの専用住宅を設けた。1~3カ月間は月1万円。郡山市なら東京駅から東北新幹線で1時間20分前後なので、移住体験にもってこい。3大都市圏からは離れるが、山口県周南市にも「お試し暮らし住宅」がある(コロナで当面停止)。ほかの自治体でも、様々な支援制度を実施している。