理想の上司ランキング、男性部門で5年連続第1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)。関係者への取材を重ねた著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。
第7回目のテーマは「機能する放牧型マネジメント」。
* * *
いくら上司に「自由にやっていいよ」と言われても、同時にプレッシャーを与えられては、部下はのびのびとパフォーマンスすることはできないだろう。
日本テレビ『イッテQ』の古立善之氏とフジテレビ『スカッとジャパン』の木月洋介氏。くしくもそれぞれのテレビ局で内村の番組を演出するふたりが、その仕切りスタイルについて同じことを語っている。
「内村さんがMCの時は、みんなが自由にしゃべれる。上手に落とせなかったらどうしようなどと迷い、若手が前に出られないということがない。そこまで話が煮詰まっていなくても、しゃべりたかったらしゃべればいい。それは内村さんの包容力なんです。現場の空気が壊れるとか、積み上げてきた話の流れを読まなければ、みたいなことを気にしなくていい」(古立氏)
「内村さんの仕切りには“圧”がないんですよね。内村さんはコメントを振るにも急に懐に切り込んだりしないので、若い出演者の人も緊張しないで自由にのびのびできるんだと思います」(木月氏)
「包容力」「自由」「のびのび」といったキーワードが出てくるように、内村は後輩芸人や若手のキャストをとにかく放牧する。そこに内村的なお笑いのルールや規制はなく、とにかく「本人らしくやらせる」という手法を取っている。他人にあれこれ指示をしたり、意見をしたりしない、実に内村らしいスタイルだといえる。
「プレッシャーを与える」「管理的支配をする」というマネジメントアプローチが“否”とされる現代社会において、内村の「緊張をさせない」「自由に放牧する」スタイルは、実に“令和的なアプローチ”である。管理と指導の下で、半ば強制的にチームの力を発揮させるのが昭和・平成的なマネジメント論であるとすれば、働き方改革以降の令和的なマネジメント論は、関わるチームメンバーの持つ“潜在的な力”を湧き起こすことがポイントといえよう。