「薄すぎて読めない──」。小学校で鉛筆の濃さの指定をHBから2Bに上げる動きが広がる。一方、デジタルツールの導入で、手書き離れがますます進む可能性もある。AERA 2021年6月7日号の記事を紹介する。
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「これはどう?」。学校で使う鉛筆を買うため、文具売り場を訪れた親子。
「ダメだよ、鉛筆は2Bって言われているから」
小学校6年生の娘は母親のすすめたBの鉛筆を棚に戻し、2Bに取り換えた。母親は言う。
「そういえば、いつから2Bになったんですかね? 私の時代はHBやBでもよかったのに」
■入試もHBから2B
別の家庭に話を聞くと、やはりこちらの学校でも2Bが推奨されていた。宿題の漢字練習をすれば、手の側面は真っ黒に。それがテーブルや椅子にもつくため「いちいち拭いて回っています。こんなに濃い必要ってあるのでしょうか?」と、怪訝(けげん)そうに聞き返す。
なぜ、学校で2Bを推奨するようになったのか。現場の教師に話を聞くと、意外なことが見えてきた。
「手の力が弱いのか、書いてあることが判別できないようになってきました」
東京学芸大学付属小金井小学校で副校長を務める塚本博則教諭はこう話す。ここ1、2年、児童が書いた答案が読めない事態が起きていた。
「『正しいものに〇をつけましょう』という問題がありますが、鉛筆で書かれた印が薄すぎて、どれに〇がついているのか分からないんです」
間違いを消した跡と、丸印の判別がつかないものが増えたという。同校の入試では例年、入試に使う鉛筆を学校側が用意。HBの濃さで統一していたが、最近は2Bの鉛筆を用意することにした。
「筆圧が低下しているという話はよく耳にします」(塚本副校長)
手の力の低下が要因の一つではないかと指摘する。
「体育の授業で鉄棒をしても、ぶら下がれる時間が減ってきています。子どもたちが日常生活の中で手を使うことが減っていて、それも関係があるのではないでしょうか」(同)
水道の蛇口もシングルレバー式が多くなり、ひねって回すタイプはほとんど見ない。これまでは日常生活でつけられていた手の力が、生活様式の変化に伴い低下しているのかもしれない。