黒川博行・作家 (c)朝日新聞社
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、愛車購入について。

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 わたしが最後に新車を買ったのは、高校教師をしていたころだから、四十年ほど前になる。赤いパルサーEXA(これは名車)だった。それに三年ほど乗り、次に買ったのが中古のパジェロで、以降はすべて中古車しか乗っていない。

 オペルオメガ(これも名車)、ベンツ190、ボルボ740、トヨタMR2、フェアレディZ、BMW740i、BMW530i、アウディA6、ベンツEクラス、フィアット500など、すべてを高校のころからの親友のカゴちゃんに買ってもらった。カゴちゃんは伊丹でディーラー向けの中古車卸(主に輸入車)をしている──。

 と、前置きをしておいて、もう七年ほど乗っている2008年式の某ドイツ車のリアウインドーが泡だらけ(ガラスに貼られているデフロスターフィルムが浮いてデコボコ)になって後方が見えづらくなってきた。カゴちゃんに中古部品のリアウインドーを探してもらったが、ない。ヤナセに訊くと、在庫部品は二十万円以上して工賃もかかるという。

 わたしはそのドイツ車が気に入っているので、年式の新しい同じモデルに買い換えることにした。カゴちゃんに電話をして希望をいうと、彼は日本各地で開催される業者向けオークションで探してくれた。半月後に条件どおりの車が東京で見つかり、入札価格はカゴちゃんに任せて翌日のオークションを待った。

 カゴちゃんがいうには、その車は東京の某ディーラーの店頭にもおかれていて、ディーラーが換金のためオークションに出品したらしい。わたしがネットで中古車サイトにアクセスすると、年式、グレード、車検年月、走行距離の合致する車が確かにあった。

 車は翌日のオークションで落札できた。某ディーラーの店頭価格より十五パーセントは安かったからうれしい。カゴちゃんからファクスでオークション精算書と譲渡委任状、落札した車の車名と型式、車体番号、車長、車幅、車高が送られてきたので、わたしはその日のうちに代金を振り込み、印鑑証明をとり、所轄の警察署に行って車庫証明の申請をした。車の登録はディーラー任せにするひとが多いと思うが、手続きは案外に簡単で、ほんの一、二時間の手間をかければ代行料を払わずに車を入手することができる(売手と買手が直接取引をするインターネットオークションでも車の売買はできるが、車の状態や支払いでトラブルが多いと聞く)。

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黒川博行

黒川博行

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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