逆に、プロレスは自分より小さいレスラーと戦うとすごく楽なんだ。ジャンボ(鶴田)も俺と戦うときは楽だったろうなぁ。馬場さんやジャンボ以外にもロッキー羽田、タイガー戸口と大きい選手はいっぱいいた。俺はプロレスの中では中の上……、いや、やっぱり上の下くらいのサイズだからね。馬場さん、ジャンボと並ぶと一回り小さいもん。引退試合で戦ったオカダ(・カズチカ)も大きくて、試合開始5分で「ああ、こいつはさすが新日本プロレスのエースだな」という雰囲気と圧を感じたもんだ。格闘技でからだがデカいのは圧倒的に有利だよ。
他に苦手だったレスラー? そうだな、苦手というより嫌いなのは大仁田厚だね。彼は自分がやっていることがすべて正義のように振舞うし、それをファンにも無理強いしているようなところがあるからね。ファンがそれで納得しているというのなら、なおさら節目でしっかりケジメをつけろと言いたい。1994年5月に俺がFMWのリングに上がって大仁田とノーロープ有刺鉄線金網電流爆破デスマッチをやったときも、俺が勝った試合後に平気な顔で引退を宣言したりして話題を持って行って、人の上前をはねるようなことをする。
大仁田は商売っけが先に立つから、とにかく鼻について、相容れないものがある。ただ、俺が先日入院したときも気遣うメッセージをくれたんだよな……。そんなことをされたら悪口も言いづらいだろう! まったく、そういう目ざといところが大仁田らしいな(苦笑)。
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。