学力を伸ばすには私立の中高一貫校が有利とされてきた。だが、最近は公立校も工夫を凝らし、躍進している。過去最多の東大の合格者を出した神奈川県立横浜翠嵐高校もその一例だ。どんな教育で東大に導いたのか。AERA 2021年6月21日号で篠塚弘康校長が語る。
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この春、本校では東京大学に過去最多の50人が合格しました。前年26人の約2倍。現役に限ると44人で前年の約3倍に躍進しました。
飛躍の要因となったのは、意外にもコロナ禍で3カ月休校になったことかもしれません。休校になってすぐに課題やオンデマンドの授業を配信するなどの対策をとったこと、そして何よりも生徒に日頃より自ら学習習慣を身につけるよう指導してきたことが大きなアドバンテージとなったと思います。オンデマンドによる授業や課題を次々と配信し、生徒たちが自ら学習することで、力をつけることができました。そこの部分で他校の生徒さんに勝ることができたのではないかと思います。
学習習慣をつけるために、本校では入学前から動き始めます。合格者向けの説明会の際に、合格者を「ゼロ学年」と呼び、入学まで毎日4時間の学習をお願いします。そのために国語・数学・英語から多くの課題を出し、「もう翠嵐生としての学習は始まっている」という意識を持たせるようにしています。
■高3半ばから受験対策
入学後の学習オリエンテーションでは、平日は学年プラス2時間、休日は学年プラス4時間学習するよう指導しています。このような取り組みが学習習慣を育み、今回の結果につながったと考えています。
さらに、1年生から模試はたくさん受け、問題をもう一度解くなどの「振り返り」も欠かさずにやります。私立の中高一貫教育校が6年間で難関大学受験のための指導をするところを、公立高は3年でやらねばなりません。そのため、本校では早い段階で理系・文系に分かれ、高2の12月ごろには「第1志望宣言」をさせます。生徒は保護者と話し合い、「私はここの大学に入る!」と宣言してもらいます。学校からは「志望レベルを下げるのはいつでもできる。常に志望は高く、そして変えずに貫いて頑張りなさい」と伝え、教員が弱気になった生徒を励まし、支えていきます。そして5教科の基礎をできるだけ早い時期に固めるよう授業を展開し、高3の半ばから受験対策態勢に入ります。