
「NEWS」でアイドルとして活躍しながら、作家としても意欲的に活動する加藤シゲアキさん。芸能人が作家活動を続ける苦悩や次回作について、作家・林真理子さんが伺いました。
【加藤シゲアキ『オルタネート』で実感 新潮社の校閲がすごい!】より続く
* * *
林:私、今回お目にかかるんで久しぶりにデビュー作の『ピンクとグレー』(12年)を読み直したら、初めてなのにあれをちゃんと書けたって、やっぱりすごいですよ。きちんと構成もできていて、キャラクターも二人をちゃんと書き分けているし。
加藤:あのときはコメントもいただき、ありがとうございました。
林:あのあと、いろんなインタビューで「芸能人が書いたとか、ジャニーズが書いたとか言われてすごく悔しかった」とおっしゃってましたけど、加藤さんのそういう気持ちがいちばんわかるのは、たぶん私だろうなと思う。ご存じないでしょうけど、私も40年近く前はテレビにいっぱい出ていたので、小説を書いても「まともなものなんか書けるわけない」ってずっと言われていて、直木賞をとったときも「話題づくりのためにとらせたんだ」とか言われたんですよ。
加藤:僕、とってないのに言われますからね(笑)。
林:これだけ書いているのにそう言われて悔しい、という加藤さんの気持ち、私はすごくわかるんです。でも、賞を一つとっておくと世間の目がだいぶ変わるし、特に吉川英治文学新人賞というのはすごくいい賞ですから、その賞をとったのはよかったな、と思って。
加藤:ありがとうございます。林さんだけでなくて、伊集院静さんも同じような思いをされたらしくて、だから以前は、文学賞をとらないとダメだろうと思っていたんです。でも、ここまで書いてきて賞に縁がなかったから、もはやそういう悔しさも薄くなってきていて。若い人が読書離れしている昨今、『オルタネート』をきっかけに本を好きになってもらえる、そんな入り口になればいいなという気持ちで書いていましたね。だから文学性みたいなものはいったん置いて、リーダビリティー(文章の読みやすさ)を大事にしたいなと思って書いてました。