日本は信教の自由があり、どんな信仰を持とうと自由である。だが、親の宗教によって、その子どもが苦しんだり、人生の選択を制限されたりするケースがある。その教義が特殊なものであるほど、子どもは苦悩し、生きづらさを抱えることが多くなる。いわゆる「カルト(※)2世」問題だ。AERA dot.では「カルト2世に生まれて」として、親の信仰によって苦しんだ2世たちのインタビューを短期連載する。第3回は、母親からの厳しい縛りつけで恋愛すらも許されなかった2世のケースを紹介する。
【写真】男性と性的関係を持つと「地獄に落ちる」と教えられたカルト2世の女性
※カルトは「宗教的崇拝。転じて、ある集団が示す熱烈な支持」(大辞泉)とあり、本稿でもその意味で使用している。親が子に信仰の選択権を与えないほどに熱狂的な信者であり、そうした家庭環境で育った子どもを「カルト2世」と定義している。当然ながら、本稿は教団の教義や信者の信仰を否定するものではなく、一部の2世が感じている“生きづらさ”に焦点を当てることを目的としている。
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<この世の中はサタンが住む悪の世界>
<婚前恋愛・性交渉は禁止>
<結婚相手は選べない>
カルト2世として生まれた高山彩子さん(36・仮名)は、ずっと母親にそう教えられて育ってきた。家で見られるテレビ番組や漫画、雑誌などは母親が事前に検閲して許可したものだけ。そんな環境のせいか、いつしか愛読書も教典になった。
日曜日には教会に通って、熱心に祈りをささげた。夏休みになると泊まり込みで行われる勉強会にも参加し、先輩信者たちの体験談や幹部の講演に耳を傾け、繰り返し教典を読み込んだという。
「両親は教団が行うマッチングで結婚しました。父の家系は身内に病弱な人が多く、またギャンブルで失敗した人もいたそうで、19歳で入信したそうです。母は人間関係での悩みが多かったらしく、人生の目的や生きる意味を求めてたくさんの宗教を渡り歩いたそうですが、どれも心に響かなかったそうで、ようやく巡り合えたと感じたのがこの教団だったと聞きました。『私の疑問にいつも明確な答えを与えてくれる』といつも話していて、母にとってはそれが心の平安になっていたようです」