教団の教えでは、信者同士の家庭から生まれた子どもは原罪のない「神の子」として神を中心とする家庭を完成させるといわれる。それゆえ「2世」は、自分たちは他の人とは違うんだ、という選民思想が強くなっていったと彩子さんは言う。

 だが、いくら彩子さんが「神の子」でも、親や先祖たちは原罪を持ち、それが脈々と遺伝してきたと考えられている。そのため、高山家では教団が勧める先祖供養も、積極的に行った。

「先祖供養は8家系430代までさかのぼって供養するように勧められます。正確な金額はわかりませんが、一代ごとに数十万円の献金が必要だと言われていて、さかのぼっていくほど額も大きくなるようです。うちは400代ぐらいまで供養しましたから、最終的には数千万円は献金したのではないでしょうか。この他にも、あれこれと教団への寄付をしていましたから、トータルで家一軒分ぐらいのお金は教団に流れていったと思います。大学受験の時に、同級生たちが塾へ通っていたので私も行きたいと言った時に『そんな余裕はない。大学も国公立以外は行かせられない』ときっぱり言われ、あの時初めて、ああ、うちは貧乏なんだ、と実感した記憶があります」

 高校生になると部活や受験勉強で忙しく、それまで欠かさず通っていた教会や泊まり込みの勉強会なども次第に参加する時間が取れなくなっていった。それでも彩子さんは教会へ行けない時も教典を読み、教義についての勉強は続けていたという。

「大学は地元の公立大に合格したので実家から通っていましたが、その頃からでしょうか、教義や両親の言葉に漠然とですが疑問を抱くようになっていきました。それまでは、この世にはサタンと神しか存在しない、つまり、悪い人といい人、白か黒か、正しいか誤りかといった二極の思考を植え付けられていたので、物事に常に明確な答えを求めていました。でも、大学へ行って違う世界を見ると教典に書かれていることと実社会で起きている現実とのギャップが大きく、少しずつ白と黒だけではないグレーゾーンが存在することに気づいたんです。モヤモヤとした感情を抱えながら、“摂理としては納得できても教団が実際に行っていることは、違うのではないか”という疑問が湧いてきて、次第にそれが大きくなっていきました」

次のページ
母親から「彼とどこまでしたのか」と詰問