ベニザケを主役にした漫画(『CRIMSONS 紅き航海者たち』)なら知っているが、マンボウを主役にした漫画を私は知らない。
マンボウが漫画に登場することは非常に少なく、だいたい背景の一部か、モブキャラとしてちょっとだけ登場して、悲しくもそれ以降二度と出てこないのが一般的だ。漫画で確かにマンボウだけに焦点を当てた回もあるが、私的にはマンボウがもっと登場する漫画が1つくらいあってもいいと思うのだ。
ここでは、以前紹介した漫画「雑食系グルメコメディ漫画『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』のマンボウ料理回を徹底検証! 」以外の、私の知るマンボウが登場する漫画(いわゆるマンボウ回)とそこでネタに使われたマンボウの知見を紹介しよう。なお、マンボウが登場するアニメについてはまた別に取り上げたい。
■『ワイルドライフ』15巻.第131話「マンボウとアンコ」
藤崎聖人氏による獣医師の漫画で、この巻は2005年に発売された。この回はリュウグウノツカイの幼魚が漁獲され、水族館に運ばれたところから始まる。水族館に入れられたリュウグウノツカイは弱っており、その治療にマンボウが使われるのだ。
作中ではマンボウに関して、「海面でプカプカしている時もあれば、深海600m以深に潜る時もある」、「体内から特殊な抗生物質を出し、病気にも怪我にも強い」、「皮下に厚い軟骨層があり、ライフル銃の弾も簡単に通さない」といったことが書かれており、丈夫な強い魚として描かれている。この抗生物質を出すマンボウとリュウグウノツカイを同じ水槽に入れることにより、リュウグウノツカイが元気になる、というのがこの回のおおまかなストーリーだ。
実際、マンボウには「体表から出る粘液に抗生物質が含まれており、魚の傷を治す効果がある」という伝承めいた話が、2000年代半ば以前の魚の本に時々書かれている。しかし、本当にマンボウの粘液に抗生物質があるのかどうかは、今のところ科学的に確認されていない。何故ならちゃんと研究した人がいないのだ。今後、真偽を確かめるために研究する必要があるだろう。
また、皮下にあるのは軟骨層ではなく、ゼラチン層だ。皮下ゼラチン層は大型個体ほど厚くなる。「ライフル銃で捕獲されたマンボウを撃ったが、外皮に傷を付けることができなかった」という逸話は確かに海外の文献に書かれている。
水面から水深600m以深を行き来するのは、確かに最近の研究でもデータが示されている。また下ネタ枠であるが、作中ではヤリマンボウも簡単に紹介されており、マンボウ以外のマンボウ科魚類が漫画で紹介されるのは珍しい。