まずは最大のストレス要因を見極めよう(写真:builderB / PIXTA)
まずは最大のストレス要因を見極めよう(写真:builderB / PIXTA)
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西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている
西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている

 先月、俳優の深田恭子さんが適応障害から休養することが報道された。適応障害はうつ病につながるケースも多く、決して他人事ではない。『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新書)の著者である西野一輝氏が、職場の適応障害の実体験を取材。重症化しない・させないための方法とは。

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 適応障害の要因となるストレス。このストレスの感じ方や耐性は人それぞれなのですが、そのように捉えていない上司・同僚が多いことが発症を増やす要因かもしれません。

 取材した総合商社に勤務しているSさんは2年で2回の人事異動があり、職場環境の変化が要因で適応障害になってしまいました。そんなSさん曰く「自分を守る対策を考えるべきでした」と反省の弁を語ってくれました。

 もともと人事異動が頻繁にある職場で、新しい職場に適応する努力が成長機会でもあるという考えのもとに、果敢に異動が行われてきました。Sさんは本社から地方に転勤。都会生まれで初めての環境変化に戸惑ったものの、何とか馴染もうとしていました。しかしその矢先に本社勤務に戻されたのです。

 上司は「元の職場環境に戻っただけ」と考えて、仕事をドンドン任せていきました。同僚も同様にケアする気配はなく「もっと頑張って」と自分の仕事のサポートを求めてきます。Sさんは、地方勤務に慣れかけた状況から、本社の忙しい状況に戸惑い、ストレスから寝られなくなっていきました。遅刻が増え、会社を休みがちになってしまったのです。

 ところが上司からはケアどころか「明日から出てきてくれないと困る」と出社を強要するような連絡が来ます。Sさんはそれがきっかけでますます体調が悪化し完全に出社することができなくなってしまい、病院で適応障害と診断されました。

 ところがそれでも上司は、

「適応障害なんて気の持ちようだ」

 と変わらず出社を求めてきたというのです。さすがにSさんは会社を辞めることを決断しました。

 このように、未だに一部の職場では適応障害が病であることが認識されていません。むしろ、さぼっているとネガティブな印象で接してくる可能性さえあります。こうした認識の上司や同僚が、適応障害が蔓延する職場の問題点と言えるのかもしれません。

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