開幕まで4週間を切った東京五輪は、これまでの五輪と同じように厳しい戦いになりそうですが、複数の金メダル獲得、33人の競泳代表全員の決勝進出という目標は、決して不可能ではないと考えています。

 00年シドニー五輪から代表選手の指導者として五輪に関わってから20年、五輪で最高の結果を出すためにはどうすればいいかを考えて、実践してきました。選手一人ひとりにそれぞれのゴールがあります。金メダル候補は金が取れるように、メダル候補はメダルが取れるように、しっかり対策を練って対応していきます。

 目の前の大目標に向けて全力を傾ける時期ですが、東京五輪後の強化も常に頭の中にあります。ここ数年感じているのは、日本の競泳全体のレベルが下がっていることです。08年北京五輪から個人種目の派遣標準記録よりもハードルを下げたリレーの派遣標準記録を設けて、代表選手が30人を超えました。

 3個の金メダルを含む8個(銀1、銅4)のメダルを取った04年アテネ五輪の代表は20人です。今回の33人の代表の選考会の記録を見ると、個人種目で5年前のリオ五輪の派遣標準記録を突破している選手は15人にとどまります。

 世界の強豪国の記録の出方を見ると、日本競泳の将来は楽観できません。東京五輪を、全体のレベルが上向きに変わる、きっかけにしたいと思います。

(構成/本誌・堀井正明)

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

週刊朝日  2021年7月9日号

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