30代独身男性のBさんは、女性部下の1人が体調を崩すことが多いため、心配して訊ねたところ、少しだけ自分の症状を話してくれた。深くは聞けなかったが、女性部下が月に1回、話していた症状で休暇を取得していたことから、Bさんはいろいろ調べた末に、PMSを疑った。しかし結局は、「病院へ行ったほうか良いよ。原因が分かったら共有して」と声をかけるくらいしかできなかったと言う。

「男性が女性に性や身体の疑問を投げかけることは、性的な下心と誤解されることがあるため、難しい面があります」

 Bさんは小学校の性教育で、「女性には生理があり、体調を崩す場合がある」という話があったことは覚えていた。しかし、知識として残っているのはその程度。男女別に行われたことから、「女性はデリケート」という印象を強く受け、「女性に性や身体の疑問を投げかけることは控えた方が良い」という空気を感じたという。

「少なくとも体調に関わることは、男女関係なく共有出来たほうがお互い楽になると思うので、話しやすくなればいいのにと思います。でも、残念ながら生理について男性が言及することに嫌悪感を抱く女性もいるので、現状では正直、いくら勉強しても『取扱注意』みたいな感じになってしまう。男女ともに、性に対する考え方、捉え方のアップデートの必要性を感じます」

  性教育をまともに受けていない大人たち

 前々回、日本の保健の教科書ができたのは1992年ごろで、その後ようやく小学校での性教育が始まったことを書いた。それ以前は、多くの自治体や小学校では、高学年になると男女別に集められ、女子は月経についての授業を受けたが、男子はその間、校庭で遊んでいたケースが少なくなかった。つまり、30代後半以上の男性は性教育が不足している可能性が高い。

 では、それ以下の年代は十分な性教育を受けてきたのだろうか。

「1992年以降も以前も大して変わらない。日本の大人は男性も女性もまともに性教育を受けていないに等しい」

 そう語気を強めるのは、『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(KADOKAWA)の著者の1人で、長年性教育に携わってきた村瀬幸浩さんだ。

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日本は「性産業先進国」