「ラッパ屋の舞台は通常年に1回。もう36年続いていますが、こればかりは全然仕事だと思ってないです(笑)。東京の実家で、家族と過ごす夏休み、みたいな感じです。ただ、今回の作品に関しては、鈴木さんがタイムリーな問題意識を持っています。基本コメディーなんですけど、批判性は、普段よりちょっと強いかもしれない。でも、それもテレビを見ている大勢の人たちが思っていること。だから、この舞台を観てスカッとしていただける人は、けっこう多いんじゃないかと思います」
以前、劇団員がそろって中年に差しかかったとき、おかやまさんは鈴木さんに、「今の若い人たちみたいな舞台をやってみたいとは思わないの?」と聞いたことがある。
「そしたら鈴木さんは、『自分が年を取ったら、そのまま書きたいことを書けばいいんじゃないの?』って。鈴木さんに関心があって書きたいものに僕らが乗せられて、鈴木さんが年を取れば、介護のことを気にしたり。登場人物も老けていく。中年劇団じゃないです、もう初老劇団です(笑)」
最近は、バイプレーヤーとして映像に舞台に引っ張りだこのおかやまさんだが、「でもね」と、いたずらっ子のように目を丸くして言った。
「俺、いまだに仕事がなくなったらいつでもバイトする覚悟はありますもん。それはたぶん、役者の宿命なんでしょうけど」
(菊地陽子 構成/長沢明)
おかやまはじめ/1964年生まれ。宮城県出身。大学在学中の87年に鈴木聡率いる劇団「ラッパ屋」に入団。以降、ほぼ全作品に出演している。2018年8月に発表された「日経エンタテインメント!」のドラマ出演数ランキングで、光石研、滝藤賢一、遠藤憲一と並ぶ9位にランクイン。大河ドラマ「青天を衝け」第18回に稲垣練造役で出演。9月はジャニーズWEST桐山照史主演舞台「赤シャツ」にも出演。
※週刊朝日 2021年7月23日号より抜粋