定年後に何をすればいいのか。あり余る時間の処し方に悩むシニアは多い。再就職はもちろん、コロナ禍の今ではオンラインを駆使して趣味や趣味仲間を見つける人も。
* * *
オンラインの波は、趣味だけでなく「ボランティア活動」にも広まりつつある。社会福祉法人奉優会は、2014年にシニア向けボランティアコーディネートサイト「YELL(エール)」を開設。現在までに、累計89団体のボランティア活動を斡旋(あっせん)してきた。これまでは花壇の手入れや草むしり、レクリエーションの講師などが多かったが、去年以降はオンライン講座のボランティアが増加。自宅や高齢者施設にいるシニアに向け、Zoomを使って折り紙や英会話、書道などの教室を開いているという。
「コロナ禍でテレワークが普及したことで、場所を問わずボランティア活動に参加できるようになったのはオンラインならではの利点だと感じます」(公共サービス事業部部長・小宮山友宏さん)
シニアと企業をつなげる、新しい取り組みも始まっている。奉優会は今年1月、シニアの就労と社会参加を支援する「北区立いきがい活動センター(きらりあ北)」を開設した。地元企業から事業相談を受け付け、その課題解決にシニアの力を生かすことで、より包括的な地域貢献のスキームを組み立てている。
「この前は、生地開発を手掛ける会社から『開発中の下着の着用感を知りたい』という相談があり、モニターを募集したところたくさんのシニアの方々が応募してくれました。地元企業の課題をボランティアで解決する一方で、今後はボランティア体験から就労につなげる流れもつくっていきたいと考えています」(YELL担当・立花由紀子さん)
きらりあ北センター長の阿波連建世さんは、「延々とタオルを畳むだけなど、単純で労働感が強い作業では自己効力感が感じられず、単なる“作業”になってしまう。シニアが知識や経験、個性を生かしながら、アクティブに取り組めるボランティアを増やしていきたい」と語る。
生かせるのは仕事から得た経験だけではない。