ピンの抜き刺しがなくなる時間短縮に加え、金属スパイクと比べて軽いという利点もある。アシックスの実験では、同社製スパイクシューズと比較して100メートル換算で0.048秒速く走れる。最初は「不安だった」という桐生も大会で好タイムをマーク。開発の2人に話したという。

「地面からの反発を感じやすく、もうピンありには戻れない」

 東京五輪では、日本が金メダルを目指す男子400メートルリレー(8月5日に予選、6日に決勝)のメンバーに選ばれた。出場すれば、ピンなしスパイクの走りに注目が集まりそうだ。

■厚底が長距離界に革命

 東京工業大学の宇治橋貞幸名誉教授はこう話す。

「陸上競技はシューズやトラック素材を含めたさまざまなテクノロジーの影響を受けてきました。短距離だけではなく、中・長距離でもシューズの力が大きく表れます」

 長距離界に革命を起こしたのがナイキの厚底シューズだ。リオ五輪でプロトタイプ版を履いた選手が好記録を出し、翌年に発売されると記録を大幅に更新する選手が相次いだ。世界陸連は20年1月に規定を変更。靴底の厚さは40ミリ以内、大会で履くには4カ月以上の市販期間が必要といった規定ができた。

 十種競技の元日本記録保持者で、名古屋学院大学准教授の松田克彦さんはこう話す。

「確かにシューズは年々進化し、ナイキの厚底シューズは履いただけで前に重心移動できるような革新的な技術も入っている。ただ、ナイキがすべての長距離ランナーに合うわけではなく、例えば体重や筋力のある人はふわふわしてうまく走れない。体形や足型を確認し、自分の走りを生かせるシューズを見つけることが大事だと思います」

 リオ五輪で3個のメダルを獲得した卓球では、日本選手団副主将の石川佳純(28)や張本智和(18)らが日本勢悲願の金メダルを狙う。その日本代表が近年導入したのが、国立スポーツ科学センター(JISS)とIBMが開発したAIによる試合映像の分析システムだ。

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