先の副市長による「開設できない」という発言は、あくまで海の家を管轄する海浜組合に向けた個人的な発言であり、それとは別に海水浴場を開設するか否かを話し合う意見交換会を市民と開きたい、と。市としては近隣住民からの一定の理解が必要と考えるので、海浜組合と近隣自治会、市の3者で話合いを持ちたいという。

 だが、増田さんら海浜組合側は、海水浴場を開けないと言われながらわざわざその話し合いに出席するのは意味がないと判断し、意見交換会への参加を断った。

■「話し合い」の一方で「断念」の声

 その3日後の24日朝、増田さんの元に1本の電話が入った。鎌倉市の松尾崇市長からだった。

「『ちょっとお話がしたいので、今日、お会いできませんか』と言われたのです」(増田さん)

 この日の夕方、増田さんは海浜組合長ら3人で市長室を訪ねた。松尾市長は席に着くなり、「(千田副市長との話について)どういう受け止め方をされたか、確認させていただけないでしょうか」と話した。増田さんは経緯を説明すると、市長は「それはみなさんの勘違いじゃないですか」と指摘する。

「地域の方から厳しいお声をいただくなか、海水浴場を開設する場合、やはり、地域の方々の一定程度のご理解が必要だと考えているものですから。なんとかそこに向けてお互いに知恵を出し合い、何かいい案がないか、協議しようとやってきました」(松尾市長)

 松尾市長はそう言い、翌25日の「市民との意見交換会」で、鎌倉市の海水浴場開設の是非を話し合う流れであることを示した。

 そんな市長との会談中、増田さんの携帯電話に繰り返し着信があった。神奈川県海水浴場組合連合会の顧問団長を務める県議からだった。

「増田さんさ、今日の午前中、鎌倉市が神奈川県の生活衛生部に海水浴場を開けないって報告があったけど、どういうこと?」

 増田さんは松尾市長と海水浴場開設について、まさに話し合っている最中だ。しかもその電話で「閉鎖」が進められていたことを知り、面食らった形だ。翌25日に予定されていた「市民との意見交換会」は中止となり、26日、松尾市長は臨時会見を開き、昨年に続いて鎌倉市は海水浴場開設を断念すると発表した。

 海水浴場開設「断念」はすでに決まっていたのではないか。それなのに言っていることとやっていることが違う――増田さんはそんな疑念ばかりが深まった。

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過去には「クラブ」化で騒音問題も