鎌倉市の由比ヶ浜(写真/編集部・米倉昭仁)
鎌倉市の由比ヶ浜(写真/編集部・米倉昭仁)
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神奈川県藤沢市の片瀬西浜・鵠沼海水浴場で7月3日、昨夏建てられなかった「海の家」の中で、神事が執り行われた(c)朝日新聞社
神奈川県藤沢市の片瀬西浜・鵠沼海水浴場で7月3日、昨夏建てられなかった「海の家」の中で、神事が執り行われた(c)朝日新聞社

 梅雨が明けるや否や、全国的にうだるような暑さがやってきた。昨年は新型コロナの影響で海水浴場を閉鎖した地域が多かったが、今年も収束が見通せない中、各地で対応に苦慮している。都心からのアクセスも便利な湘南などの人気の海水浴場がある神奈川県は今年、県内25カ所中、15カ所がオープン。16日に海開きをした逗子海水浴場(逗子市)は、例年と比べれば海水浴客もまばらで「海の家」も少ないながら、ビーチでソーシャルディスタンスを取り入れたり海岸入り口に体温計を設置したりと、さまざまな対策を講じた。

【写真】一方、人気の鵠沼海水浴場では2年ぶりの海開き前に…

 だが逗子市のお隣、由比ヶ浜などの風光明媚な海水浴場がある鎌倉市は、今年も開設を断念した。コロナ禍の海水浴場開設には賛否わかれるところだが、なぜ、鎌倉市は断念に至ったのか。海の家などを管理する海浜組合と市との間で不可解なやり取りも……。いったい何があったのか。

*   *   *
 観光地として知られる鎌倉市。2018年までに10年間では年間に約2千万人の観光客が訪れ、うち海水浴客数は60~110万人を占める。由比ヶ浜などは東京都内からの観光客も多く、人気のスポットだ。

 しかし、鎌倉市は今夏も海水浴場の開設を断念した。市が発表した資料によると、海水浴場の開設は難しいとの 結論にいたったのは5月21日。海水浴場で「海の家」などを取りまとめる海浜組合と市との話し合いにおいて、だった。

 だが、それは「話し合い」といえるようなものではなく「一方的な市からの通告だった」と話すのは、鎌倉市海浜組合連合会の増田元秀代表だ。こう振り返る。

「話し合いの冒頭、鎌倉市の千田勝一郎副市長が『今夏の海水浴場の開設はできないと考えている』と発言しました」

 つい数日前まで海水浴場の開催期間を巡って市と協議し、海の家を建てる準備を着々と進めていた増田さんらとって、それはあまりにも唐突な話だった。副市長は開設できない理由について、大勢の海水浴客が住宅エリアに入り込み、酒気を帯びて大声を出しながら歩くなどの苦情を挙げ、海の家と周辺住民との間で信頼関係が欠落していることを繰り返し、「コロナ禍の現状認識に立つと、公共の安全も含めて維持できない。よって、開設できない」と千田副市長は説明した。

■「開設できない」と言われたが…

 増田さんら海浜組合側にとってみれば、無論、生活がかかっているので今夏は開設してもらいたい――そんな思いが強かっただけに、突然の「開設できない」発言は寝耳に水だった。

「それなのに、4日後の5月25日に開く予定の『市民との意見交換会』で海水浴場開設について話をするので、それに出席してくれ、と言うんです」

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断念なのか、話し合いなのか