入江陵介に水沼尚輝、川本武史、渡部香生子、青木玲緒樹とメダル候補を挙げるとキリがない競泳陣。ひとつ不安要素を挙げるとしたら、33人中22人がオリンピック初出場ということだ。先に挙げた注目選手のなかでも、大橋に佐藤、松元、長谷川、本多は初出場だ。無観客だからゆえに、オリンピックの独特な異様な雰囲気に気圧されることなく、落ち着いて自分のレースができるかもしれない。

 しかし、ここで鈴木コーチの言葉が甦る。『世界はオリンピックになると本気になる』。もし、予選、準決勝で力の差を見せつけられてしまったら、一気に流れは悪い方へと傾いてしまう。だからこそ、予選、準決勝の泳ぎは決勝よりも大事にしたい。

 かつてアテネオリンピックで金メダルを獲得した北島康介は、ライバルであったブレンダン・ハンセン(アメリカ)を牽制する意味で予選から全力で泳ぎ、オリンピックレコードを樹立。ハンセンの焦りを引き出し、決勝で見事に優勝を果たした。

 だからこそ、予選、準決勝の泳ぎにもぜひ注目してもらいたい。彼ら、彼女らがどういう作戦で決勝に駒を進めようとしているのか。それによっても勝敗を大きく左右するからだ。

 競泳はシドニーオリンピックから、常にメダルを獲得し続け、日本に勢いをつけてきた。東京でもスタートダッシュをかけられるか。競泳陣の戦いからは目が離せない。