この中で、私が特に注目するのが田中氏だ。彼は生粋の市民派で、長野県知事時代に、県庁入り口にガラス張りの執務室を置いたことでも有名だ。脱ダム宣言で既得権を排除し、市民の声を反映した行政で実績を上げた。今回も、田中氏の公約が具体的でわかりやすく、市民のニーズに合致していると他陣営関係者も脱帽する。田中氏は勝手連的選挙を得意とするが、これもカジノ反対の市民グループとの相性が良い。
一方、こうしたリベラル陣営の混乱に乗じ、日本維新の会の前神奈川県知事・松沢成文氏もカジノ反対を掲げ立候補。反カジノの保守派の票を狙う。ここまで反カジノ陣営の票が割れれば、カジノ推進派でも十分に当選可能だ。そこで、当初菅総理に見捨てられた林文子氏が、カジノ推進を掲げて立候補表明した。林氏当選なら、結果オーライで、菅氏は「地元で勝利」と喧伝するだろう。
実は、21日現在では、立憲の裏で糸を引く連合の影響で、立憲と共産の選挙協力が未成立だ。この選挙で負ければ、不協和音が残り秋の衆院選にも響く。
菅総理にとっても立憲にとっても負けられない選挙。五輪騒動に惑わされずに注視して行きたい。
※週刊朝日 2021年8月6日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など