山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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コロナ、熱中症対策など不安はぬぐえぬまま東京五輪は開催(C)朝日新聞社
コロナ、熱中症対策など不安はぬぐえぬまま東京五輪は開催(C)朝日新聞社

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「不安だらけのコロナ禍の東京五輪」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 東京五輪が、1年の延期を経て開催されました。延期、コロナ禍、猛暑下での開催など、いろんな意味で歴史に残る五輪となるでしょう。

 なんとか開催はされたものの、新型コロナウイルス感染拡大やメンタルヘルスへの懸念を理由に辞退する選手に加え、五輪関係者の新型コロナウイルス検査陽性が100人を超え、やむをえず出場を辞退する選手が相次いでいます。出国する前にPCR検査で陰性を確認して日本に来ているでしょうから、陽性となった選手や関係者は日本で感染したということになるでしょう。選手村に滞在している選手で陽性が出ているということは、すでに選手村で感染が広まっている可能性すらあります。ダイヤモンド・プリンセス号の二の舞にならないとも限りません。ワクチン接種済みだったのかどうか含め、調査をすることは今後も五輪を開催する上でとても大切なことだと思います。

 7月23日にはロシアのアーチェリーの女子選手が、熱中症のため一時的に意識を失ったという報道がありました。近年の梅雨明けの東京は7月中旬から8月にかけて最も気温が高くなり、蒸し暑い日が続くことが多くなっています。五輪前から東京では真夏日が続いていることに加え、なんと台風まで発生し、すでに試合の日程が変更となっています。

 参考までに、 57年前の1964年10月10日に開催された東京オリンピックでは、15日の大会期間のうち7日間で0.5ミリ以上の降水量を記録し、雨の多い大会となった一方で、秋の開催だけあって、最高気温も14.6度から23.3 度と過ごしやすい気温下での大会だったそうです。

 今回の大会も、前回のように10月に開催すれば熱中症の心配はなく、またワクチン接種も今より進んでいると思うと残念です。熱中症警戒アラートも出されるほどの高温・高湿な環境下で、マスクの着用など新型コロナウイルス感染対策も要求される異例の五輪が無事に終わることを願うばかりです。

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