決勝の五十嵐カノア選手(c)朝日新聞社
決勝の五十嵐カノア選手(c)朝日新聞社
28日サーフポイントの波。綺麗に整っている(ライブカメラの映像から/株式会社サーフレジェンド提供)
28日サーフポイントの波。綺麗に整っている(ライブカメラの映像から/株式会社サーフレジェンド提供)
27日決勝の様子(c)朝日新聞社
27日決勝の様子(c)朝日新聞社

 関東地方に台風8号が接近した27日、一部予定を変更しつつ、東京五輪の屋外競技が行われた。絶好とはいいがたいコンディション。競技によって明暗が分かれた理由とは……。

【写真】やはり条件は今朝のほうがよかった?ライブカメラの実際の映像

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「最悪の波でした。世界のトッププロにとっても本当に難しいですよ。普段なら、ぽんぽん技が出て分かりやすく、一般の人たちも見ていて楽しめたはずですが、27日は分かりづらかったと思う。せっかくの五輪新種目、できることならスーパーテクニックを見たかったですね」

こう話すのは、73歳にして現役プロサーファーの“MABO”こと小室正則さん。辻堂でサーフショップを経営しながら、半世紀以上にわたって波に乗り続けている。日本のサーファーのレジェンド、いや伝説の男といっていいだろう。

 MABOさんが注目していたのは、もちろん千葉県一宮町で行われたサーフィンだ。五十嵐カノア選手が決勝に進出。結果は惜しくも銀メダルだった。この日の会場は、混濁した色の素人目にみても荒れた海。MABOさんにはどう映ったのだろうか。

「昨日27日の会場は台風の影響もあって、あちこちから波が立って、しかも崩れやすい波でした。滑る位置がないうえに、すぐ崩れるので滑る時間もない。それに、あの波はコンクリートの壁が迫ってくるように重たいはずで、プロでも腰がひけちゃうんですよ。昨日のような波では、良い演技はできません。台風の影響は、すごく大きかったと思います。普通の人は、あの潮の流れや高さでは、まず乗れないと思いますし、沖に出ることも難しいはずです」

 銀メダルを獲得した五十嵐カノア選手は準決勝ではランキングで格上の選手を相手に激闘を制した。しかし、決勝では波に乗り切れない様子だった。

「決勝では、ちょうど波のサイクルが相手選手のほうにあって、五十嵐選手のほうには良い波がこなくて、運がまるっきりなかった。いくら実力があっても、波に合わないと点数が稼げないので、かわいそうではありました。ランキングは相手が上ですが、実力では五分五分。良い波がくれば、勝てたと思う。本人としては、悔しかったと思いますよ。僕も試合を見て涙ぐんでしまいましたよ。でも、あれがサーフィンの大会の厳しさなんですよ」

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世界のトップレベル以外は危険