しかし、振り返ってみると、麻雀に費やした時間は膨大だったですね。その代わりに、もう少し勉強していたらと考えないではないのですが、一方で無駄ではなかったという気持ちもあります。
実は、麻雀は手術の腕を磨くのに役に立ったと思っているのです。
腕のいい外科医の条件は、まずは切除範囲が適正であること。取り過ぎも取り残しもダメです。そして、手術時間は短いほうがいいのです。切除範囲を決めるのには「記憶」と「直観」がものをいいます。検査データを過去の経験(記憶)に照らし合わせ、その上で患部を直接見て、直観を働かせる。あとは一つひとつの作業を動じず、落ち着いてこなします。
一方、麻雀は対戦相手3人を一瞥(いちべつ)して、過去の記憶と直観で戦局の流れをつかみます。あとは相手のふるまいに動じず、落ち着いて牌(パイ)を切って、一つひとつ上がっていけばいいのです。
私は麻雀で記憶力と先を読む直観力を養いました。それが手術の腕を上げることにつながり、その後の人生にも役に立ったと思っているのです。また、久しぶりに麻雀をやってみようかな。
※週刊朝日 2021年8月6日号