そのスペイン代表。今年のEUROでベスト4に入ったA代表組6人の他にも各ポジションですでにリーガで活躍中のメンバーを揃えた抜群のタレント力で、大会前から優勝候補筆頭だった。だが、グループリーグは3試合で1勝2分(2得点1失点)と苦戦。圧倒的にボールを支配しながらもゴール前での決定力を欠いた。
準々決勝・コートジボワール戦でもその流れは変わらず、1対1からアディショナルタイムに失点して土俵際にまで追い込まれた。だが、そこからFWラファ・ミルが泥臭く同点ゴールを決めると、延長戦で一気に3点を奪う“ケチャドバ状態 ”で5対2の勝利。日本と同じ延長120分を戦った疲労度はあるが、日本が冨安健洋を累積警告で出場停止となる一方、スペインに準決勝で出場停止となる選手はおらず。コートジボワール戦で出場停止だった右SB、オスカル・ヒルの出場が可能となり、さらに初戦のエジプト戦で負傷離脱した背番号10のMFセバージョスも復帰できる可能性がある。
大会前の7月17日に行った親善試合では、42分に堂安律の先制ゴールでリードを奪うも、78分にソレールに同点弾を許して1対1の引き分け。シュート数は日本10本、スペイン18本だったが、ボール支配率はスペインが66%と圧倒された。さらにスペインは来日直後で、EUROで最優秀若手選手賞に輝いたペドリは68分からの出場だった。本番前に一度対戦したことでスペイン対策は練りやすいが、それは相手も同じこと。通常、“ジャイアントキリング”を起こすためには手の内を隠しておくべきで、一度戦ったことで得る優位性はスペインの方に多くある。さらに日本は開催国ではあるが、無観客のスタンドと夜8時キックオフの試合でどこまでホームアドバンテージがあるか。
この条件下で試されるのは、日本代表の“真の力”である。勝てば銀メダル以上が確定。負けても銅メダルの可能性は残るが、「どうせ2試合やるなら、最後、最終日はしっかり決勝の舞台で戦いたい。リラックスして全力でぶつかりたい」と久保は言う。この日のニュージーランドのような“組織的かつ勇気ある戦い”を、今度は日本が繰り広げられるか。スペイン相手にボールを支配するのは至難の業だが、腰が引けた守りのサッカーでは日本に未来はない。同時に、勝つと負けるとでは雲泥の差であることを、選手たちはこの日改めて感じたはずだ。8月3日20時、埼玉スタジアム。日本サッカー界の未来をかけた、運命のキックオフの笛が鳴る。