東京五輪のバドミントン男子シングルスで世界ランキング1位の桃田賢斗が早々と敗退した。それでも日本男子初のメダリストが混合ダブルスで生まれるなど、日本勢は今大会も前進した。AERA2021年8月9日号の記事を紹介する。
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最後のシャトルが相手のラケットをかすめてコートに落ち、銅メダルが決まった。渡辺勇大(24)は両手で大きくガッツポーズし、東野有紗(25)と抱き合って喜びを爆発させた。7月30日の東京五輪バドミントン混合ダブルス3位決定戦。同種目での五輪メダルは日本勢で初めて。渡辺は男子選手としても日本勢初のメダルを手にした。
今大会は前日の準決勝で中国ペアに敗れたが、3位決定戦では香港ペアに競り勝った。第1ゲームを21─17で先取すると、第2ゲームは23─21。渡辺はこう振り返る。
「最後は気持ちのぶつかり合いで、先輩(東野)に声をかけてもらって、僕が折れそうになっても踏ん張らせてもらった。最後は2人の気持ちだけの勝利だったかなと思います」
渡辺は東京都、東野は北海道の出身。2人がペアを組んだのは、福島・富岡一中(現ふたば未来学園中)時代のことだ。中高一貫でバドミントンを強化する同校には全国から有望選手が集まっていた。2人は富岡高校に進み、2014年に世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。18年と21年には100年以上開催されてきた伝統の全英オープンを制するなど、コンビネーションを磨いてきた。1学年下の渡辺は言う。
「この年齢で10年目というペアは世界を見ても少ない。先輩だからきっと僕をコントロールできたと思うし、先輩だから僕も一緒にやってこられた」
東野は時間をかけて渡辺と信頼関係を築いてきたという。
「男女のペアなので、最初のほうはなんて声を掛けたらいいのか悩んだりしたけど、(混合ダブルス日本代表コーチでマレーシア出身の)ジェレミーさんが『コミュニケーションは大事だよ』と教えてくれて、コミュニケーションを取るようになってから、勇大君ってこう思っているんだと考えられた。勇大君が自分のパートナーでずっとい続けてくれて本当によかった」