汗をたくさんかく夏は、体の水分が失われやすい。それは、熱中症や脱水だけでなく、膀胱炎を起こす要因にもなるという。トイレに行く回数が減っているようなら、水分補給を意識しよう。夏の膀胱炎の対策について、産婦人科医の松峯寿美先生にアドバイスをもらった。
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「膀胱炎の典型的な症状は、尿の出始めの痛みと尿の濁り。残尿感、頻尿などを伴うこともあります。『もしかして』と思ったら、早めに医療機関を受診しましょう」(松峯医師、以下同)
膀胱炎には、急性膀胱炎と慢性膀胱炎があり、急性膀胱炎の多くが細菌の感染によるもの。健康な人の尿は透明の薄黄色だが、膀胱や尿道の粘膜に炎症が起きると、おしっこが白っぽく濁ったり、褐色になったり、血液が混じって薄いピンクになることがある。加えて、排尿の始めにじわっとした痛みを感じるのが急性膀胱炎の特徴だ。
夏は、汗をかいて脱水を起こしやすいだけでなく、尿量が減って、急性膀胱炎になりやすい時期でもある。水分不足に陥ると、どうして膀胱や尿道の中で炎症が起こりやすくなるのだろうか。
「健康な人であれば、細菌が膀胱内に入ったとしても、排尿することで洗い流される仕組みがあります。でも、水分の摂取不足や汗で身体の水分が失われると、尿量が減り、濃縮された尿の中で細菌が培養されやすくなるのです」
■女性がなりやすい病気 汗っかきも注意
夏場以外でも、トイレをがまんしたり、風邪をひくなどして抵抗力が落ちたりすると、細菌を体の外に排出する自浄作用が乱れやすくなる。そこに水分摂取量の不足や脱水が加わると、急性膀胱炎を起こしやすくなってしまうのだ。
「なかでも急性膀胱炎を起こしやすいのは、汗っかきで、1日のおしっこの量が少ない人。のどの渇きを感じたら、すでに水分不足に陥っているサインです」
膀胱炎は男性よりも女性がなりやすい病気。女性の外陰部には尿道口、腟口、肛門の3つの穴が並んでおり、大腸菌などの細菌が尿道口から入り込むことがあるからだ。また、男性に比べて尿道が短いことも要因の一つ。男性はペニスがあるため尿道が約10センチと長めだが、女性はほんの3センチ程度。そのため、細菌が体の外から侵入しやすいのだ。
「接客や営業の仕事をしている人、育児に追われている授乳期の人の場合、水分を摂りそびれたり、トイレをがまんしたりしがちです。のどの渇きを感じる前に意識的に水分を摂るように心がけてください。急性膀胱炎を予防するためにも、水分をしっかりと補給して、トイレをがまんしないことが大事。『トイレが近くなるから』と、水分を控えるのはよくありません」