「1日3食きちんととれば、スープやみそ汁、デザートのフルーツなどからも水分が摂れます。食後にはお茶を飲むように心がけ、のどの渇きを感じる前にちょこちょこと水分を摂るのがコツです。夏場は食事の他に、1日あたり1~1.5リットルくらいは水分補給したいですね」
一方、尿の濁りや排尿痛はないものの、「頻尿が続く」ときは膀胱炎とは別の泌尿器トラブルのこともある。頻尿や尿意切迫感が強い場合は、「過活動膀胱」(膀胱に尿が少量しかたまっていないのに、トイレが近くなる神経性の排尿トラブル)の可能性や、尿路や膀胱に結石ができて、膀胱や尿路を刺激するために頻尿になっているケースが考えられる。
また、女性の場合、婦人科系のトラブルが頻尿の原因となるケースもある。骨盤内には膀胱、子宮、直腸が隣り合っているため、子宮筋腫や周囲の臓器にできた腫瘍が膀胱を圧迫して、頻尿になるケースもあるのだ。
ただし、そうした別の病気が原因の場合にも、トイレを我慢することによって、急性膀胱炎になりやすいことは覚えておこう。
■予防には夏野菜とクランベリージュース
膀胱炎の予防・改善に役立てるセルフケアとしては、水や麦茶、ハーブティーなどで水分補給を心がけることが第一。そして、日々の食事で利尿作用のあるウリ科の夏野菜やフルーツを食べると効果的だ。おすすめはスイカやメロン、きゅうり、トウガン、カボチャなど。トマトやなす、ピーマン、パプリカなど、ナス科の夏野菜にも利尿効果があることで知られている。
また、近年、膀胱炎などの尿路感染症の予防・改善効果のエビデンスが知られるようになったのがクランベリージュースだ。北米原産のクランベリーは、ネイティブアメリカンが古くから自然薬として使用してきた歴史があるほど。
クランベリーに含まれるキナ酸という成分には尿のpH(ペーハー)バランスを弱酸性に保つ効果があることが最近の研究で明らかになり、尿路感染症を予防する健康補助食品として開発されたジュースやゼリー、サプリメントも登場している。
「クランベリージュースを飲むと、おしっこを弱酸性のpHに保つことができるので、膀胱や尿道に付着した大腸菌などの細菌が繁殖しないように、洗い流してくれる効果があります」
夏の急性膀胱炎を予防するセルフケアの一環として、コップ1杯のクランベリージュースを試してみるといいかもしれない。(取材・文/スローマリッジ取材班 大石久恵)
松峯寿美(まつみね・ ひさみ)/東峯婦人クリニック理事長。医学博士。日本産婦人科学会専門医。1970年、東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学病院に“不妊外来”を創設。1980年より東京・木場に東峯婦人クリニックを開業し、女性専門外来の先駆けとなる。思春期から妊娠・出産、更年期、老年期まで、女性の健康管理を見守り、サポートし続けている。『やさしく知る産前・産後ケア』(高橋書店)など、著書多数。